広告

今週のドラマの余白 Vol.3|2026年秋ドラマ3作品に見る「見えているものの、その先」

今週のドラマの余白 Vol.3|2026年秋ドラマ3作品に見る「見えているものの、その先」 今週のドラマの余白

こんにちは、nanaです。

※この記事は、2026年10月19日(月)〜25日(日)に放送された『南田南弁護士は天才肌』『相棒 season25』『アナログナース~デジタルってなんなんだよ!?~』の第1話について、重要な展開に触れています。未視聴の方はネタバレにご注意ください。

10月も終わりに近づき、秋の新ドラマが次々と顔をそろえてきました。今週は、初めての法廷に立つ新人弁護士、懐かしい教え子との再会から大きな事件に関わる刑事、そしてデジタル化された病院に現れた一人の看護師と、まったく違う世界で生きる人たちの物語が始まりました。

今週、私が取り上げたいのは『南田南弁護士は天才肌』『相棒 season25』『アナログナース』の3作品です。誰かを守るために法律を学び、事件の真相を追い、患者の命と向き合う。どの仕事にも専門的な知識と経験が必要なのに、目の前にある情報だけでは、どうしても答えが出ない瞬間があります。

南が踏み出せなかったエスカレーターの一段。亀山薫が再会した教え子の背後にある母国の事情。システムが止まった病院で、那須田灯が直接確かめようとした患者の状態。そこには、誰かがすでに出した答えや、外から見える印象だけではわからないものが残されていました。

今回は10月19日から25日までの放送を振り返りながら、それぞれの人物が何を見て、何を疑い、どんな選択をしたのか。その先に見えてくる人間らしさを、ゆっくりたどっていきたいと思います。

『南田南弁護士は天才肌』|立ち止まった先の一歩

10月19日に始まった『南田南弁護士は天才肌』。新人弁護士の南田南(芦田愛菜)は、東京大学法学部を首席で卒業し、司法試験にもトップで合格した優秀な女性です。それほどの経歴を持ちながら、自閉スペクトラム症への偏見に阻まれ、なかなか法律事務所に採用されませんでした。

ようやく広川・ハワード法律事務所で働き始めることになった南が、初出勤の日に立ち止まったのは、難しい法律問題の前ではなく、オフィスへ向かうエスカレーターでした。

動く段差に足を合わせられず、どうしても一歩が踏み出せない。人によっては何も意識せずに通り過ぎる場所が、南にとっては簡単に越えられない壁になるのです。彼女の経歴を知っていれば、最初は意外に感じるかもしれません。でも、学業で優れた成果を残すことと、日常のあらゆる場面で困らずに過ごせることは、必ずしも同じではないのでしょう。

そんな南に手を差し伸べたのが、パラリーガルの船井湊人(高橋文哉)でした。印象的なのは、湊人が彼女の苦手なことを無理に克服させようとするのではなく、リズムを合わせながら、その一歩を支えたところです。

誰かにとって簡単なことが、別の誰かにも簡単だとは限らない。そうわかっていても、私たちはつい自分の感覚を基準にしてしまいます。南を助けるために必要だったのは、彼女の能力を評価することでも、代わりに何でもしてあげることでもなく、南が踏み出せる方法を一緒に見つけることだったのかもしれません。

南田南弁護士は天才肌を象徴する六法全書と空に浮かぶクジラ

ところが法律事務所に入ると、南を迎える人たちの反応は必ずしも温かいものではありません。上司の宮地賢吾(山口馬木也)は、南が自閉スペクトラム症だと知って戸惑い、弁護士として働けるのかという疑問を抱きます。目の前にいる南がどんな仕事をするのかを見る前に、その特性だけで判断しかけているのです。

南が最初に担当したのは、認知症の夫をアイロンで殴り、殺人未遂の罪で起訴された一ノ瀬圭子の事件でした。宮地は執行猶予を目指すよう指示しますが、南は殺人未遂について無罪を主張すると言い出します。

この選択もまた、周囲から見れば理解しがたいものだったでしょう。夫を殴った事実があり、負傷させている以上、無罪を求めるのは無謀に映ります。それでも南は、何をしたのかという事実と、どの犯罪が成立するのかという法律上の判断を分けて考えようとします。依頼人のこれからの暮らしまで視野に入れている点にも、彼女らしい弁護の姿勢が表れていました。

裁判は予想外の出来事によって難しい局面を迎え、南自身も迷い、苦しむことになります。豊富な知識があっても、最初からすべての答えを知っているわけではない。それでも自分が見落としていたことはないかと確かめ直す姿に、私は、天才という言葉だけでは語れない南の強さを感じました。

そして、第1話で忘れられないのがクジラの存在です。南にとって特別なクジラの話が、湊人との間で交わされることによって、二人の距離は少しずつ変わっていきます。南の関心を単なる珍しい趣味として扱わず、その世界を一緒に見ようとする湊人の姿には、エスカレーターの場面と通じる優しさがありました。

相手のことを理解するというのは、何もかも同じように感じられることではないのでしょう。自分には見えていなかった世界が、その人には大切なものとして広がっている。湊人が南のクジラの話に耳を傾ける時間は、そんな当たり前のことを、私たちにも思い出させてくれます。

第1話の事件そのものを詳しくたどりたい方には、『南田南弁護士は天才肌』第1話考察|南はなぜ無罪を主張した?クジラのひらめきと初裁判で、裁判の経緯や父・誠の支え、湊人との関係をまとめています。

エスカレーターの前で動けなかった南が、初めての法廷では誰もが選ぶわけではない道へ踏み出していく。その対照的な姿が心に残ります。人には苦手なこともあれば、周囲が思いもよらない力を発揮できる場所もある。南と働く人たちが、肩書や特性ではなく、彼女自身を知るようになっていく時間を、これからも見守りたくなりました。

第1話の放送内容はフジテレビ公式・第1話あらすじでも確認できます。

『相棒 season25』|薫の教え子が運んできた事件

10月21日に始まった『相棒 season25』。初回拡大スペシャル「PMクライシス~総理の秘密と密約の罠」は、国家を揺るがしかねない事件と、亀山薫(寺脇康文)の懐かしい過去が交わる物語でした。

薫のもとへ、かつてサルウィンで教えていた女性から連絡が入ります。日本へ留学してきた彼女との再会には、薫と妻・美和子(鈴木砂羽)が遠い異国で過ごした時間が重なります。教え子が成長し、今も自分たちを覚えていてくれたことは、二人にとってうれしい出来事だったはずです。

しかし、近況を聞いていくと、その再会は懐かしさだけでは終わりません。サルウィンは再び軍事政権のもとに置かれ、彼女は母国の家族と自由に連絡を取ることさえ難しい状況にありました。薫たちにとって思い出のある土地が、そこに暮らす人々にとっては今も厳しい現実の続く場所になっている。教え子の話を聞くうちに、過去と現在の隔たりが浮かび上がってきます。

そんななか、都内の高級居酒屋で総理大臣補佐官が刺殺される事件が発生。杉下右京(水谷豊)は、被害者と親交の深かった現職総理・溝口飛駒(筒井道隆)から話を聞き、かつての再開発事業をめぐるトラブルに行き当たります。

一方では、週刊誌に総理の秘密を暴露したいという匿名の連絡が入り、さらに薫の教え子に人探しの助言をした大学助手・光屋大二郎(木村了)の存在も気になり始めます。政治家の殺害、過去の再開発、匿名の情報提供、そして薫の教え子。最初は何の関係もないように見えた出来事が、少しずつ互いを引き寄せていくのです。

相棒 season25の再会と謎を象徴する和室の二客の湯呑みと封筒

こうした事件を追う右京の姿には、長年見慣れてきたはずの人物でありながら、今回も目を離せないものがあります。警察が一つの容疑を追い始めても、そこに疑問が残れば簡単には納得しない。権力のある人物の説明も、怪しく見える人物の行動も、確かめる前から結論にしてしまわないのが右京です。

今回も、表に出てきた情報だけで誰かを犯人だと決めることはできません。総理に近い人物が殺されたからといって、動機が政治的なものとは限らず、過去に恨みを抱いた人物がいたからといって、その人が事件を起こした証拠にもならない。右京が一つひとつの情報のつながりを探る過程には、そんな当たり前で難しい姿勢が見えてきます。

一方、私が特に気になったのは、薫が事件に関わるきっかけが、かつての教え子との再会だったことです。特命係の刑事としてなら、薫は数え切れないほどの事件に向き合ってきました。でも今回は、その前に、かつて自分たちが教えた女性の置かれた事情を知ることになります。

人を助けたいという気持ちは、刑事としての使命感だけで生まれるものではありません。知っている誰かが困っているとき、何とかしたいと思うのは自然なこと。その思いが強いほど、相手の話を信じたい気持ちも大きくなるでしょう。右京の冷静な疑問と、薫の人間らしい情の深さが並ぶことで、単なる政治事件とは違う緊張感が生まれているように感じます。

誰かが語った話は、必ずしもすべてではない。本人が隠している事情もあれば、本人ですら知らないところで別の思惑が動いていることもあるのでしょう。右京が事件の矛盾を見逃さないように、薫もまた、目の前の教え子が抱えているものを簡単には見過ごせなかったのではないでしょうか。

事件の規模は大きくても、その入口にあるのは、一人の女性が昔の先生に会いたいと願ったことでした。私はそこに、この初回の面白さを感じました。政治の駆け引きや捜査の進展を追う一方で、薫がサルウィンで出会った人々とのつながりも、この物語から切り離せないのだと思います。

薫と右京が、それぞれの立場から何を守ろうとするのか。現時点で事件のすべてを知ったつもりにならず、二人の次の選択を見届けたくなる幕開けでした。

放送内容と登場人物はテレビ朝日公式『相棒 season25』第1話ストーリーで確認できます。

『アナログナース』|画面の外にいる患者を見る

10月22日に始まった『アナログナース~デジタルってなんなんだよ!?~』は、AIやデジタル技術が急速に導入されている医療現場を舞台にした物語です。

フリーランス看護師の那須田灯(松下奈緒)は、スマートフォンを持たず、記録は手書き、給料も現金払いにこだわるという、今の時代には珍しい人物。そんな灯がやってきた百井メディカルセンターでは、AIを活用した新施設への大規模な移転が進められていました。

デジタル推進部長の萬里小路かよ(冨永愛)の指揮のもと、スタッフたちはAIが作成した計画に従って患者を搬送します。秒単位で組まれた予定どおりに進めば、大勢の患者を安全かつ効率的に移せるはずでした。

ところが、院内のスマートフォンが突然フリーズし、現場は混乱に陥ります。患者の名前や搬送先を照合できず、ストレッチャーが次々と滞留してしまう。看護師たちは目の前に患者がいるのに、必要な情報をすぐに取り出せないのです。

そこへ現れた灯は、システムの復旧を待つのではなく、自分の目で患者を確かめ、優先順位を判断しながら指示を出し始めます。さらに緊急手術が必要な患者についても、外科医の神戸大五郎(津田健次郎)と協力して危機に対応しました。

アナログナースを象徴する手書きの看護記録と聴診器、停止したモニター

画面に表示される情報がなくなっても、目の前にいる患者が消えるわけではありません。苦しんでいる人がいて、その状態を確かめる必要がある。灯は、システムを使えない状況でも看護師が自分の判断で行動しなければならない場面があることを、現場で示していきます。

ただ、私はこの作品を、単純にデジタルが悪くてアナログが正しいという物語として受け止めたくはありません。医療のデジタル化には、膨大な情報を共有し、間違いを減らし、医療従事者を支える役割があります。問題になるのは、便利な仕組みに頼るうちに、そこで働く人が判断する力まで手放してしまうことなのではないでしょうか。

その問いが、病院長・百井太郎(高橋英樹)の手術をめぐる展開にも表れていました。

病院のエース外科医である神戸は、AIや手術ロボットを十分に使いこなせないことを理由に執刀を任されず、代わりに別の医師が選ばれます。神戸には経験と技術があっても、病院が重視する新しい基準では評価されない。その悔しさは、長年積み重ねてきた仕事そのものを否定されたようにも感じられたでしょう。

一方の灯は、手術前の百井に気になる点を見つけ、延期を勧めます。しかし手術は予定どおり進められ、最中に想定外の事態が起きてしまいます。そこで灯が求めたのが、神戸への執刀医交代でした。

ここで印象深かったのは、灯が自分の考えを押し通すだけではなく、百井本人が神戸に身体を預ける意思を示した手書きの同意書を用意していたことです。医療の判断には専門的な知識が必要ですが、その治療を受けるのは一人の人間。技術や設備をどう使うかという問題の奥に、患者自身の意思があることを思い出させる場面でした。

神戸と灯が協力して手術を進める姿からは、長年の経験で培われた技術も、新しい時代の医療から簡単に切り離せないものだと感じます。もちろん、人間の勘がいつでも正しいわけではありません。それでも数値や画像が示す結果だけではなく、患者の状態を直接見て、その人が何を望んでいるのかを確かめることは、技術が進んでも変わらず必要なのでしょう。

同じ医療の現場でも、答えが簡単には出ない瞬間はあります。『救命病棟24時』2026年第2話で宮沢が蘇生の手を止めた理由を考えた記事では、同じ患者を前にしても、医師の判断が分かれる苦しさを振り返っています。

灯は、デジタルを知らないからアナログを選んでいるだけの人物ではなさそうです。新しい技術を取り入れることと、人間が自分で考えること。その両方が求められる時代に、彼女が病院の人たちとどんな関係を築いていくのか、楽しみな第1話でした。

作品の設定や登場人物はテレビ朝日公式『アナログナース』番組ページで確認できます。

3作品を振り返って|答えを急がない人たち

今週の3作品を振り返ると、私の中に残っているのは、正しい答えを知っている人の姿というよりも、簡単には答えを出さなかった人たちの姿でした。

南田南は、上司が示した弁護方針だけで依頼人の未来を決めませんでした。杉下右京は、政治家の殺害事件で表に現れた情報をそのまま結論にせず、その裏にあるつながりを追い続けます。那須田灯は、病院のシステムが止まっても、目の前の患者を直接確かめることをやめません。

六法全書とクジラ、二客の湯呑み、看護記録を収めた雑誌の誌面

それぞれの行動は決して同じではありません。南には法律を通して守ろうとするものがあり、右京には事件の真相を見極めたいという姿勢があり、灯には今そこにいる患者を救うための経験と判断があります。共通しているのは、目の前の状況を誰かがすでに説明してくれていても、そこで考えることを終わりにしないところなのでしょう。

その一方で、誰かを理解するには、自分一人の知識だけでは足りないことも描かれていました。南には歩幅を合わせてくれる湊人がいて、薫にはかつての教え子とのつながりがあり、灯の判断を実際の医療行為につなげる神戸がいます。何かに気づくことと、その気づきを行動に変えることの間には、他者との関係があるのだと思います。

今週始まったばかりの3作品ですから、登場人物たちの本当の強さや弱さも、まだこれから見えてくるはず。南の職場での居場所、薫の過去と交わる事件の行方、灯と病院の仲間たちとの関係。どれも、最初に見えた姿だけでは語り切れない物語になっていきそうです。

来週、誰かの意外な一面に出会ったときには、その前にどんな時間が積み重ねられていたのかも思い出してみたいですね。エスカレーターの前で待つ湊人、昔の教え子の話に耳を傾ける薫、そして混乱する病院で患者を確かめる灯。そんな小さな行動のなかにも、これからの物語を読むための手がかりが残されているように感じました。

今週もまた、続きを見届けたいドラマが増えました。

過去の週刊コラムは、「今週のドラマの余白」一覧からご覧いただけます。

広告・画像について
当サイトでは、もしもアフィリエイト等のアフィリエイト広告を利用しています。
一部の記事では、内容理解を補助する目的で生成AIによる画像作成・編集支援を行う場合があります。商品画像・仕様・価格・在庫状況などの正確な情報は、公式サイトまたは販売ページをご確認ください。
今週のドラマの余白
シェアする
nanaをフォローする
タイトルとURLをコピーしました