こんにちは、nanaです。Netflixで配信されて以来、世界中で旋風を巻き起こし、不動の人気を誇る『First Love 初恋』。宇多田ヒカルさんの名曲にインスパイアされたこの物語は、単なるラブストーリーの枠を超え、人生の喪失と再生を描いた壮大な叙事詩として多くの人の心を掴んで離しません。
しかし、このドラマ、少し複雑だと思いませんか?過去と現在が頻繁に入れ替わるノンリニアな構成になっているため、見ている最中に「あれ、今はいつの時代?」「この時の二人の関係はどうなっていたっけ?」と、頭の中の相関図が追いつかなくて混乱してしまうことってありますよね。
時系列が複雑に絡み合っているからこそ、キャストの年齢差や、晴道と恒美が別れた本当の理由、あるいは也英の手紙が隠された真の意味など、細かい伏線の答え合わせをしたくなるのだと思います。
この記事では、そんな「もう一度深く知りたい」という疑問を一つひとつ丁寧に紐解きながら、物語をより深く、より感情移入して味わうための情報を徹底的にまとめました。一度見ただけでは気づけなかった発見が、きっとあるはずです。
First Love 初恋の相関図とキャスト紹介

このドラマの最大の魅力であり、同時に視聴者を悩ませるのが、1990年代後半から現代に至るまでの20年以上にわたる壮大な時間の流れです。ここではまず、物語のベースとなるキャスト情報の詳細や、時代ごとに刻々と移り変わる関係性について、整理しながら深掘りしていきましょう。
主要キャストと年齢の比較
『First Love 初恋』の成功の鍵を握っていたのは、間違いなく主要キャラクターを異なる世代の俳優さんが演じ分ける「ダブルキャスト制」にあります。通常、同一人物を別の役者が演じると、どうしても違和感が生じたり、視聴者の没入感が途切れてしまったりするリスクがあるものです。
しかし、本作ではその違和感が全くないどころか、それぞれの時代の空気感やキャラクターの成長を見事に表現していて、グイグイと引き込まれますよね。
ただ、ドラマを見ながらふと「実際の俳優さんたちの年齢差はどうなっているんだろう?」と気になったりしませんか?役柄上の年齢設定と実年齢には、どのようなマジックが隠されているのでしょうか。まずは、主人公の二人を演じたキャストの実年齢や身体的な特徴を比較してみましょう。
| 役名 | 現代パート(30代〜) | 過去パート(10代〜20代) |
|---|---|---|
| 野口也英 | 満島ひかり (1985年11月30日生まれ) 身長:162cm | 八木莉可子 (2001年7月7日生まれ) 身長:170cm前後 |
| 並木晴道 | 佐藤健 (1989年3月21日生まれ) 身長:170cm | 木戸大聖 (1996年12月10日生まれ) 身長:173cm |
この表を見て驚くのは、やはり野口也英役の二人、八木莉可子さんと満島ひかりさんの身長差ではないでしょうか。過去パートを演じる八木さんの方が、現代パートの満島さんよりも身長が高いのです。
通常であれば、成長して背が縮むことはないので映像的な矛盾になりかねません。しかし、ドラマを見ている間、不思議とその身長差が気になりませんでした。
透明感と儚さの接続
それはなぜかというと、八木莉可子さんが持つ圧倒的な「透明感」と、どこか浮世離れした「純真さ」、そして意志の強さを感じさせる「太い眉」といった特徴が、そのまま満島ひかりさんの演じる「儚げだけど芯の強い大人の女性」へと、精神的な部分で違和感なく接続されているからだと思います。
八木さんが演じる10代の也英が持っていた輝きが、過酷な運命を経て、満島さんが演じる30代の也英の「喪失感を抱えた静かな佇まい」へと変容していく過程に、私たちは説得力を感じるのです。
エネルギッシュな動と静
一方、並木晴道役の木戸大聖さんは、本作で大ブレイクを果たしましたね。彼の演じる若き日の晴道は、とにかくエネルギッシュで直情的、喧嘩っ早いけれど情に厚い、まさに「太陽」のような存在でした。
彼のこの熱量の高い演技があったからこそ、佐藤健さんが演じる大人になった晴道の、一見クールに見えてその奥底に燃え続ける「静かな情熱」が一層際立って見えたのかなと思います。佐藤健さんの抑えた演技は、木戸さんが作り上げた「晴道」という人間が、自衛隊での経験や震災、そして也英との別れを経て、どう大人になっていったかという歴史を感じさせるものでした。
このように、単に顔が似ているかどうかではなく、キャラクターの「魂」のようなものを共有しているキャスティングこそが、このドラマを名作たらしめている大きな要因だと言えるでしょう。
晴道と也英の時系列の変化

検索でも非常によく調べられているのが、この「時系列」です。ドラマでは「1998年」「2018年」「2001年」といった具合に、時代が頻繁に行ったり来たりします。これは記憶のフラッシュバックを演出する効果的な手法ですが、ストーリーを整理して理解したい時には少し難解ですよね。
二人の関係性がどう変化していったのかを理解するには、大きく3つのフェーズ(時代区分)に分けて考えると、相関図が驚くほどスッキリと見えてきます。
関係性が劇的に変わる3つの時代区分
第1フェーズ(1990年代後半〜2001年):運命の出会いとFirst Love
この時代は、二人の相関図において最も純粋で、強固な繋がりがあった時期です。1998年の冬、雪の降る北海道で晴道が也英に一目惚れしたことからすべては始まりました。
猛アタックの末に交際がスタートし、お互いが世界の全てであり、唯一無二の存在となります。ライラックの木の下で将来を誓ってタイムカプセルを埋めたり、タバコのフレーバーがするファーストキスを交わしたりと、まさにタイトルの「First Love」そのもの。
見ているだけで胸がキュンとするような、キラキラとした青春時代です。
第2フェーズ(2001年〜2018年):空白と分断の20年
ここが物語の中で最も長く、そして最も辛い「冬の時代」です。2001年に起きた不慮の交通事故により、也英は逆行性健忘を患い、晴道に関する記憶だけをすっぽりと失ってしまいます。
さらに、也英の母・幾波子の介入によって二人のリンクは物理的にも心理的にも完全に切断されます。この期間、二人の相関図は全く交わりません。也英は医師の向坂行人と結婚し、母となり、そして離婚を経て孤独なタクシードライバーへ。晴道は自衛官となり、震災を経てカウンセラーの恒美と婚約し、セキュリティ会社で働く日々へ。
それぞれが「別のパートナー」と「別の人生」を歩み、互いの存在を知らないまま(あるいは晴道だけが想いを抱えたまま)、20年近い歳月が過ぎていきます。
第3フェーズ(2018年以降):運命の再会と回帰
そして物語は現代へ。札幌の街角で、タクシー運転手と客として、あるいは無線越しの声として、運命の再会を果たします。当初、也英は晴道を覚えていませんでしたが、様々な偶然と必然が重なり、止まっていた時計が再び動き出します。
このフェーズでは、バラバラになっていたパズルのピースが埋まるように、すべての伏線が回収されていきます。記憶を取り戻し、お互いが一番大切な存在だったことを再確認する感動のクライマックスへと向かう、まさに「運命の回帰」の時期です。
こうしてテキストで追うだけでも、二人がどれだけ長い間すれ違い続け、遠回りを繰り返してきたかが分かって、胸が締め付けられますね。ただの恋愛ドラマではなく、人生のままならなさと、それでも消えない愛の強さを描いているからこそ、これほどまでに私たちの心を打つのでしょう。
色の考察に見る登場人物の心情

映像美がとにかく評価されている本作ですが、実は画面全体の色使い、いわゆる「カラーグレーディング」や衣装の「カラーコーディネート」に、極めて明確かつ徹底的なルールがあることに気づきましたか?
監督や制作陣が意図的に仕掛けたこの「色彩の演出」を知ると、セリフのないシーンでも登場人物の心情が手に取るように分かるようになります。特に物語の軸となる「青」と「赤」の対比は、単なるおしゃれな映像表現を超えて、登場人物のアイデンティティそのものを象徴しています。
野口也英を象徴する「青(Blue)」
まず、主人公の野口也英を象徴するのは一貫して「青」です。思い出してみてください。彼女が着ているタクシー会社の制服、普段着ている鮮やかなブルーのニット、マフラー、コート。さらには住んでいるアパートの壁紙やカーテンといったインテリアに至るまで、彼女の周りには常に寒色系の色が配置されています。
この「青」は、也英が抱えている深い「孤独」や「静寂」、そして記憶の深淵を表現しています。また、彼女がかつて目指しながらも事故によって翼を折られてしまった夢、キャビンアテンダント(CA)として飛び回りたかった「空」の色でもあります。彼女の人生に漂う、どこか冷たく寂しい空気を、この青色が見事に視覚化しているのです。
並木晴道を象徴する「赤(Red)」
対照的に、並木晴道を象徴するのは「赤」です。高校時代のマフラー、いつも着ているダウンジャケット、賑やかで笑い声の絶えない並木家の食卓に並ぶ赤いアイテム、そして彼が青春を捧げた航空自衛隊の練習機(T-4 ブルーインパルスやレッドドルフィン)に入った赤いライン。
この「赤」は、晴道の持つ尽きることのない「情熱」や「生命力」、並木家の温かい「家族愛」を象徴しています。そして何より、孤独で冷え切ってしまった也英の心や人生を温めることができる唯一の「炎」のような存在であることを示唆しているのです。
ライラック色の秘密と「紫」の意味
ここで注目したいのが、二人の思い出の花であり、物語の重要な鍵となる「ライラック」です。ライラックの花の色は「薄紫色」ですよね。色彩学的に見ると、紫(パープル)は「青」と「赤」を混ぜ合わせることで生まれる色です。
つまり、孤独な青(也英)と情熱の赤(晴道)が混じり合うことで、初めて「ライラック(初恋の記憶)」という美しい色が完成するという、隠されたメッセージが込められているのかもしれません。二人が離れ離れの時はそれぞれの色(青と赤)の世界で生きていますが、心が通じ合う瞬間、画面の中でこの二つの色が調和する瞬間は、本当に美しいですよね。
タイトルFirst Loveと初恋の違い

ドラマのタイトル『First Love 初恋』。一見すると、英語のタイトルとその和訳を並べただけのように見えますし、「同じ意味じゃないの?」と思った方もいるかもしれません。しかし、この作品における「First Love」と「初恋」は、単なる言葉の重複ではなく、明確に異なる二つの「愛の形」を示しているように感じます。
これは、宇多田ヒカルさんの二つの名曲、1999年リリースの『First Love』と、2018年リリースの『初恋』の世界観を深く読み解くことで見えてきます。
1999年『First Love』:衝動的な過去の恋
物語の前半、90年代のパートで象徴的に流れる『First Love』。この曲が表しているのは、10代の頃の、理屈じゃ説明できない衝動的で、甘くて、切なくて、どうしようもない「過去の恋」です。タバコのフレーバーや、最後のキスといった具体的な記憶と共に、心の奥底に刻み込まれた消えない傷跡のような恋心。それは若さゆえの純粋さと、未熟さが同居した、強烈な体験としての愛です。
2018年『初恋』:成熟した大人の愛
一方で、現代パートやクライマックスで印象的に使われる『初恋』。
この曲は、大人になって、人生の酸いも甘いも噛み分け、多くの喪失や痛みを経験した後にようやく知る、言葉にできないほど深く静かな「現在の愛」を歌っているのではないでしょうか。歌詞にもあるように、足音だけで誰かわかるような、日常に根差した、より精神的な結びつきです。
ドラマのタイトルが併記されているのは、この物語が単なる過去の焼き直し(First Loveの回顧)で終わるものではないからです。一度は終わってしまった初恋が、20年の時を経て、大人の成熟した愛(初恋)へと昇華され、人生の中で循環していく様を描いている。
つまり、「最初の恋」にして「最後の恋」であるという、究極の愛の形をこのタイトルは表現しているのだと思います。
記憶喪失の原因とトリガー
物語を劇的に動かす決定的な出来事、それが也英の記憶喪失です。2001年の雨の日、也英は交通事故に巻き込まれ、「逆行性健忘」を患います。
これは、事故の衝撃以前の記憶、特に直近の数年間の出来事が思い出せなくなる症状です。残酷なことに、彼女の中から「並木晴道」という存在だけが、まるで最初からいなかったかのように抜け落ちてしまったのです。
しかし、私がこのドラマで最も感動し、注目したいのは、記憶を失ったことそのものよりも、記憶が鮮烈に蘇る瞬間の描写、いわゆる「記憶の回復トリガー」の演出です。
プルースト効果の魔法
物語の最終盤、也英は息子・綴が持っていたポータブルCDプレイヤーから流れる宇多田ヒカルの『First Love』を聴きます。そのイントロのドラム音が響いた瞬間、彼女の目から涙が溢れ出し、堰を切ったように過去の映像がフラッシュバックします。
これは心理学で「プルースト効果」と呼ばれる現象を映像化したものです。プルースト効果とは、特定の「香り」や「音」、「味」などが引き金となって、それに強く結びついている過去の記憶や感情が、無意識のうちに呼び起こされる現象のこと。フランスの作家マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸した香りで幼少期を思い出す描写に由来します。
五感すべてで思い出す愛
ドラマでは、この効果が巧みに伏線として散りばめられていました。
- 聴覚:『First Love』の旋律。
- 嗅覚:ライラックの香り、そして歌詞にある「タバコのフレーバー」。
- 味覚:晴道の好物である「ナポリタン」や、二人が好きだった「ハッカ飴」。
也英がナポリタンを食べた時に「なぜか懐かしい味がする」と涙したのは、脳の記憶野が忘れていても、体が、五感が、晴道との時間を覚えていたからです。これらが積み重なり、最後に音楽が決定的な鍵となって、脳の奥深くにロックされていた10代の感情が一気に解凍されるシーンは、何度見ても鳥肌が立ち、涙なしには見られません。
First Love 初恋の相関図深掘りと伏線

ここまでは物語の基本構造について見てきましたが、ここからはさらに一歩踏み込んで、物語の表面的なあらすじだけでなく、「なぜあの時、あのキャラはあんな行動をとったのか?」という深層心理や、隠された伏線の意味について考察していきたいと思います。
晴道と恒美が別れた理由の真実
「晴道と恒美が別れた理由」は、多くの視聴者が気になり、検索しているポイントの一つです。現代パートで晴道を支え続けてきた婚約者・恒美(つねみ)。
彼女との別れを見て、中には「晴道はずるい」「恒美がかわいそう」と感じた方もいるかもしれません。しかし、じっくりと二人のやり取りを見直してみると、これは晴道が一方的に恒美を捨てたわけではないことが分かります。
恒美はカウンセラーという職業柄もあってか、人の心の機微や、言葉にされない感情を読み取る能力に非常に長けた女性です。東日本大震災をきっかけに付き合い始めた二人ですが、恒美は晴道の心が自分に100%向いていないこと、彼の心の奥底にある「開かずの間」に、ずっと「誰か(也英)」が住んでいることを、最初から薄々感じ取っていたのではないでしょうか。
それでも彼女は明るく振る舞い、晴道を愛し続けました。しかし、晴道が也英と再会し、その心が激しく揺れ動くのを見て、彼女は悟ります。決定打となったのは、彼女自身が放った「愛してくれない人を待つのは私の人生ではない」というセリフです。
これは本当に胸に刺さる名言です。彼女は、晴道にすがりつくことも、一番好きな人の「二番目」に甘んじることも拒否しました。自分自身のプライドと尊厳を守るために、そして何より、自分の未来を自分の手で切り開くために、あえて愛する人を手放すという決断をしたのです。
この別れは悲劇ではなく、恒美という女性の強さと賢さ、そして自立心が際立つ、前向きな「解消」として描かれています。彼女のこの決断があったからこそ、晴道も迷いを断ち切ることができたのです。
也英の手紙を母が隠した理由
物語の中盤で明らかになる衝撃の事実。也英の母・幾波子が、記憶を失った也英宛に晴道から送られてきた大量の手紙を、すべて隠蔽していたことには驚かされましたよね。「なんてひどいことを!」と憤った方も多いでしょう。
しかし、これも単なる悪意や意地悪からではないのが、このドラマの人間描写の深いところです。
幾波子自身のバックボーンを考えてみましょう。彼女は女手一つで、経済的にも苦しい中で必死に也英を育ててきました。自分自身が苦労した経験があるからこそ、娘には同じ思いをさせたくないという強い思いがあったはずです。
事故の後、記憶を失った娘にとって何が一番の幸せか。幾波子の目には、高卒で自衛官という(当時はまだ不安定で危険に見えたかもしれない)晴道よりも、実家が開業医で、社会的地位も経済力も約束されている医師・向坂行人と結ばれることこそが、娘の「安定した幸福」だと映ったのでしょう。
晴道を「過去の異物」として排除し、手紙を隠すことで、娘の人生を自分の理想とする美しいものに書き換えようとしたのです。
親心のエゴと代償
母の行動は、間違いなく「娘のため」を思った結果の愛でした。しかし、それは同時に、娘から「自分の足で人生を選ぶ権利」や「真実を知る権利」を奪うことでもありました。
結果として、也英は籠の中の鳥のような生活を強いられ、心を殺して生きることになります。良かれと思った介入が、逆に娘を長く苦しめる結果になってしまったのは皮肉であり、親子の愛の難しさ、エゴイズムについて深く考えさせられるエピソードです。
行人と也英の離婚理由と背景
也英の元夫・向坂行人についても触れておきましょう。向井理さんが演じる行人は、端正な顔立ちで脳外科医という、一見すると非の打ち所がない理想的な夫です。
しかし、也英との結婚生活は決して幸せなものではありませんでした。二人の関係が破綻した理由、それは根本的な「対等性の欠如」にあります。
行人が愛していたのは、美しくて、控えめで、自分の言うことを聞く「医師の妻としての野口也英」であり、彼女という人間そのものではありませんでした。彼は、也英が持つ本来の知性や、かつて抱いていた夢、自立心といったものを理解しようとせず、むしろそれらを抑圧しました。
也英の母・幾波子を見下すような冷たい態度をとったり、也英が作った食事に対して無神経な言葉を吐いたりといったモラハラ的な描写も散見されました。
決定的なのは、離婚後に経済力のない也英から息子・綴の親権を容赦なく奪ったことです。ここにも彼の「支配欲」や「所有欲」が見え隠れします。
離婚の理由は表面的には生活のすれ違いや浮気の疑い(誤解)だったかもしれませんが、本質的には、也英が「他人の人生の付属品」として生きることをやめ、自分自身の尊厳と人生を取り戻そうとした、魂の叫びによる結果だったのだと思います。
最終回のロケ地と二人の結末
数々の試練を乗り越え、物語のラスト、二人がついに再会を果たしたあの美しい雪景色。あの幻想的な場所は、北海道ではなく北欧の国、アイスランドです。
「なぜ北海道ではなく、わざわざアイスランドだったのか?」と疑問に思った方もいるでしょう。私は、あそこが物理的にも心理的にも「世界の果て」だからではないかと思っています。
日本という場所には、也英の母との関係、晴道の家族、世間体、過去のしがらみなど、二人を引き裂こうとする多くの「重力」が存在します。しかし、アイスランドという遠く離れた異国の地、しかもあのような荒涼とした美しい自然の中では、そういった社会的属性は一切無効化されます。
あそこで二人は、誰の親でも、誰の子でもなく、ただの「男と女」、ただの「晴道と也英」として向き合うことができたのです。
First Love 初恋 完全時系列年表

物語の時系列が複雑で行ったり来たりするため、主要な出来事を時系列順に整理した年表を作成しました。これを見ながらドラマを見返すと、すれ違いの期間の長さや、運命の瞬間の重みがより深く理解できるはずです。
| 年 | 出来事・関係性の変化 |
|---|---|
| 1997年 | 【プロローグ】 高校生の也英、模試のために北見へ向かう列車内で晴道に見初められる(晴道の一目惚れ)。 |
| 1998年 | 【交際開始】 12月9日:宇多田ヒカル『Automatic』デビュー。 12月10日:也英の16歳の誕生日。雪の降る夜、晴道が告白し交際がスタート。 |
| 1999年 | 【First Love期】 二人の蜜月。ライラックの木の下にタイムカプセルを埋め、将来を誓い合う。 宇多田ヒカル『First Love』リリース。 |
| 2001年 | 【事故と別離】 高校卒業後、遠距離恋愛に。 也英が交通事故に遭い、逆行性健忘を発症。晴道に関する記憶を喪失。 母・幾波子の介入により二人は強制的に別離。晴道の手紙は隠蔽される。 |
| 2004年頃 | 【それぞれの道】 晴道:航空自衛隊員としてイラク復興支援へ派遣。 也英:脳外科医・向坂行人と結婚。息子・綴(つづる)を出産。 |
| 2011年 | 【震災と新たな恋】 3月11日:東日本大震災発生。 晴道、支え続けてくれた恒美と交際を開始する。 (同時期または数年後)也英、行人と離婚。綴の親権を手放すことに。 |
| 2010年代 中盤 | 【挫折】 晴道、腰の怪我により自衛隊パイロットの道を断たれる(セキュリティ会社へ転職)。 也英、タクシードライバーとして働き始める。 |
| 2018年 | 【運命の再会】 晴道と恒美、札幌へ移住。 タクシードライバーの也英と、客としての晴道が運命的な再会を果たす(也英は記憶なし)。 宇多田ヒカル『初恋』リリース。 |
| 2020年〜 | 【記憶の回復と結末】 コロナ禍。 也英、音楽(First Love)をきっかけに記憶を完全に取り戻す。 晴道は海外の航空会社へ。 也英がパスポートを取得してアイスランドへ向かい、「世界の果て」で二人は結ばれる。 |
火星探査機「のぞみ」のメタファー
また、ここで忘れてはならないのが、ドラマの随所で語られてきた火星探査機「のぞみ」のエピソードです。1998年に打ち上げられた「のぞみ」は、トラブルにより一度は火星への軌道投入を断念しました(失敗しました)。
しかし、運用チームは諦めずに何年もかけて軌道を修正し、最後は火星に最も近づくミッションを遂行しようとしました。
この「のぞみ」の運命は、まさに晴道と也英の人生そのものの暗喩(メタファー)です。一度は運命の軌道から外れ、宇宙(人生)を彷徨った二人。しかし、長い年月をかけて軌道を修正し、最後には目的地(互いの腕の中)に辿り着く。アイスランドでのキスシーンは、失敗したと思われたミッションが、奇跡的に達成された瞬間でもあったのです。
※火星探査機「のぞみ」の実際のミッションや、その困難な運用の詳細については、JAXAの公式サイトで詳しく解説されています。
(出典:宇宙科学研究所(ISAS/JAXA)『火星探査機 のぞみ (PLANET-B)』)
綴と詩の関係が示す意味
最後に、現代パートで描かれる也英の息子・綴(つづる)と、彼が出会うダンサーの詩(うた)の関係性についても触れておきたいです。この若い二人のカップルは、単なるサブストーリーではなく、物語全体のテーマを補完する極めて重要な役割を担っています。
音楽(作曲)に情熱を注ぐ綴と、自由奔放に踊る詩。彼らの姿は、かつて大人たち(晴道と也英)が持っていたけれど、社会や運命によって封印してしまった「純粋な夢」や「衝動」を現代に再現しています。いわば、過去の晴道と也英の「やり直し(リフレイン)」であり、希望の象徴なのです。
綴は、自分の「好き」という気持ちに正直に行動し、詩への愛を貫きます。そして、その真っ直ぐなエネルギーが、躊躇する晴道の背中を押し、也英に「逃げるな」というメッセージを突きつけます。
若い世代の純粋さが、諦めかけていた大人たちの心を溶かし、「もう一度、自分の気持ちに正直になろう」と決意させる。世代を超えて影響し合い、想いが循環していくこの構造も、このドラマの相関図を語る上で欠かせない、希望に満ちた要素ですね。
First Love 初恋の相関図まとめ

今回は、ドラマ『First Love 初恋』の複雑な相関図や時系列、そして物語に隠された深い伏線について、かなり深掘りして解説してきました。一見すると複雑に見える人間関係も、3つの時代区分で整理し、色や音楽といった演出の意図を理解すると、それぞれのキャラクターが抱える愛や葛藤がより鮮明に、より切実に伝わってくるのではないでしょうか。
この作品は、一度見ただけでは味わい尽くせない、見るたびに新しい発見があるスルメのようなドラマです。「あの時の青い服にはこんな悲しい意味があったのか」「この音楽が記憶のトリガーとして機能していたのか」「恒美のあのセリフはこういう覚悟だったのか」と知った上で見返すと、きっと初回とは違った視点で、より深い感動が味わえるはずです。
ぜひ、この記事で得た知識をガイドブックにして、もう一度あの美しくも切ない『First Love 初恋』の世界に浸ってみてください。きっと、あなた自身の「初恋」の記憶とも、どこかでリンクする瞬間があるはずです。
ドラマの世界観をもっと深く味わうためのアイテム
記事を読んで「もう一度ドラマが見たくなった」「ドラマの世界にもっと浸りたい」と思った方へ。楽天市場で購入できる、ドラマ『First Love 初恋』に関連した厳選アイテムをご紹介します。自分へのご褒美や、あの感動を共有したい友人へのギフトにもぴったりです。
📖 答え合わせにも最適!公式シナリオブック
ドラマでは語られなかった心情や、ト書きに隠された演出意図を知りたいならこれ。寒竹ゆり監督による書き下ろし小説も収録されており、映像とはまた違った感動が味わえます。「あの時のあの表情には、こんな意味があったのか」と深く納得できる一冊です。
|
|
|
|
🍝 晴道の愛した「ナポリタン」を自宅で
ドラマを見ていると無性に食べたくなるのが、晴道の大好物「ナポリタン」。鉄板に乗ったあの懐かしい味を再現して、ドラマを見返しながら食べるのはいかがでしょうか?レトルトなら手軽にあの喫茶店の気分が味わえます。
|
|
|
|
❄️ 北海道の雪景色を感じる「ルタオ」のスイーツ
ドラマの舞台となった北海道・小樽。その美しい雪景色を思い出しながら食べたいのが、小樽の洋菓子舗「ルタオ」のドゥーブルフロマージュです。口の中で雪のようにとろけるチーズケーキは、也英と晴道の純粋な愛のイメージそのもの。
|
|
|
|
💿 永遠の名盤!宇多田ヒカル「First Love」&「初恋」
やはりこのドラマに欠かせないのが、宇多田ヒカルさんの音楽。1999年の「First Love」と2018年の「初恋」。アナログ盤(レコード)で聴けば、より一層ノスタルジックな雰囲気に浸れること間違いなしです。
|
|
|
|
🟣 香りで記憶を呼び覚ます「ライラック」の香水
二人の思い出の花、ライラック。その花言葉は「初恋」です。ライラックの香りを身にまとえば、いつでもドラマのあの甘酸っぱい空気を思い出せるはず。インテリアとして飾れるアロマオイルもおすすめです。
|
|
|
|


