こんにちは、nanaです。
※この記事は、唐沢寿明さん主演『白い巨塔』(2003年版)の教授選、医療裁判、財前五郎の最期まで触れています。未視聴の方はネタバレにご注意ください。
『白い巨塔』で、財前五郎と激しく対立した東貞蔵教授。財前の才能を誰よりも近くで見てきたはずの恩師が、なぜ自分の後任に彼を選ぼうとしなかったのでしょうか。
第1話で描かれる知事の手術後の記者会見、医局員を従えた総回診、そして菊川昇を迎えて繰り広げられる教授選を振り返ると、東教授が財前に向けた厳しい言葉には、医師としての警戒心だけでなく、自分の立場を脅かされることへの恐れも重なっていたように見えます。
しかし、東教授を単なる嫉妬深い人物として片づけてしまうと、物語後半の大切な変化を見逃してしまいます。大学を退いたあと、佐々木庸平の死をめぐる医療裁判で証言台に立ち、最後には自分を追い越していった財前の命を預かることになるからです。
この記事では、東教授が財前を遠ざけた理由を具体的な場面からたどり、教授選で失ったもの、佐枝子や里見との関わり、そして最終回の手術に込められた師弟関係の変化を考察します。
この記事でわかること
まず、この記事で押さえておきたいポイントを4つにまとめます。
- 東教授が財前五郎の才能を認めながら、後任教授に選ばなかった理由
- 菊川の擁立と教授選の敗北が、東教授に残したもの
- 退官後の医療裁判で東教授が証言を決意した背景
- 最終回で東教授が財前の手術を執刀した意味
東教授が財前に抱いた複雑な感情
2003年版『白い巨塔』の東貞蔵を演じたのは石坂浩二さん。浪速大学医学部第一外科の教授として長年その地位を守ってきた東は、学内の序列や医師としての礼節を重んじる人物です。
その一方、唐沢寿明さん演じる財前五郎は、卓越した手術技術と強烈な上昇志向を持ち、自分の能力を人前で示すことにもためらいがありません。同じ外科医でありながら、積み重ねてきた実績を大切にする東と、実力で自分の未来を切り開こうとする財前では、医師としての価値観だけでなく、大学という組織の中での振る舞い方も違っていました。
東は財前の優秀さを知らなかったわけではありません。むしろ、その腕を理解しているからこそ、財前が自分の手の届かないところへ進もうとしていることも感じていたのでしょう。師として誇らしく思っても不思議ではない成長が、退官を目前にした東には、自分の存在を過去のものにされるような不安をもたらしていたのかもしれません。
記者会見で奪われた主役の位置

第1話で財前は、大阪府知事の難しい食道がん手術を見事に成功させます。見学室から手術を見守っていた東にとっても、それは第一外科の技術力を示す大きな成果だったはずです。
ところが、手術後の記者会見では、責任者として説明しようとする東よりも、実際に執刀した財前へ記者の関心が集まります。財前は自信に満ちた態度で説明を続け、東はその様子を不快そうに見つめていました。
財前の腕前が世間に評価されることは、第一外科にとって決して悪い話ではありません。しかし、長年その組織の頂点に立ってきた東にとって、部下が自分以上に注目を浴びる光景は複雑だったのでしょう。
ここで興味深いのは、財前が東の地位を公然と否定したわけではないことです。ただ、周囲の人々が財前を中心に見始めたことで、それまで当然のように保たれてきた教授と助教授の序列が、少しずつ揺らぎ始めました。
自分の評価が下がったわけではないのに、他人が評価されることで落ち着かなくなる。東教授の嫉妬は、そんな人間の弱さが医局という特別な組織の中で大きくなっていく過程として見ることもできます。
総回診の叱責には正しさもある

その翌日、東教授の総回診が行われます。多くの医局員を従えて病棟を歩く東の姿は、第一外科における教授の権威を視覚的に示すものでした。
財前が前日の手術について自信たっぷりに語り始めると、東はその態度を厳しく戒めます。手術の腕に自信を持つことと、自分の技術に酔ってしまうことは違うという指摘には、経験を重ねた外科医としての考え方も感じられました。
財前は難しい手術を成功させています。だからこそ東の叱責を素直に受け入れられず、年老いた教授が若い自分を妬んでいるのだと受け取ってしまいます。
ただ、東の言葉をすべて嫉妬から出たものと考えるのも違う気がします。実際、財前は患者を救う能力に優れている一方で、自分の判断に絶対的な自信を持ち、他人からの異論を軽視するところがありました。その危うさを東が見抜いていた可能性は十分にあります。
問題は、東自身の中にも嫉妬やプライドがあり、医師として正しい警告と個人的な感情を切り離せなくなっていたことではないでしょうか。厳しく指導するほど財前は反発し、財前が実績を重ねるほど東は警戒を強める。二人は同じ医局で働きながら、互いの言葉を以前とは違う意味で受け取るようになっていきます。
後任教授をめぐる師弟の決裂
東教授には定年退官の日が近づいていました。そこで避けられない問題となったのが、浪速大学第一外科の次期教授を誰にするかということです。
財前は自分の手術技術とこれまでの実績から、後任教授の有力候補であることを自覚していました。しかし東は、財前をそのまま後継者にすることに強い抵抗を覚え、学外から別の候補を迎えようと動き始めます。
ここで師弟関係は単なる性格の不一致を超え、教授の椅子をめぐる対立へ変わりました。財前にとって教授就任は長年の目標であり、東にとっては自分が築いてきた第一外科の将来を決める最後の大仕事でもあったからです。
東が菊川を招いた理由

東が後任候補として目をつけたのは、石川大学の菊川昇助教授でした。財前と同じく優れた外科医でありながら、控えめで慎重な態度を見せる菊川は、東にとって望ましい後任候補に映ったのでしょう。
第5話では、手術の報告に東の部屋を訪れた財前が、そこにいる見知らぬ男性と顔を合わせます。その人物こそ、東が後任として迎えようとしていた菊川でした。
財前にとっては、自分が当然のように進めると思っていた道に、突然別の人物が立ちはだかった瞬間です。それまで恩師に反発しながらも、いずれ自分の腕を認めてくれるという期待がどこかにあったとすれば、この対面によってその期待は大きく揺らいだはずです。
一方の菊川は、もともと財前を敵視していたわけではありません。東から勧められて教授選に関わることになり、徐々に派閥争いの中心へ引き込まれていきます。菊川自身にも医師としての誇りがあり、大学の政治に巻き込まれることへの戸惑いが描かれていました。
東が菊川を選んだ理由には、後任教授としての資質への評価があったのでしょう。しかし、財前以外を選びたいという個人的な思いも、その判断から切り離せません。後任を選ぶという公的な役割に、財前への私的な感情が入り込んだことが、この教授選を複雑にしてしまったのだと思います。
東家の暮らしと「くれない会」
東教授の立場を考えるとき、病院の外にある家庭の様子も見逃せません。妻の政子は、教授夫人たちの集まりである「くれない会」での立場を強く意識し、夫の退官後に自分たちがどう扱われるのかを気にしていました。
知事の手術後に財前ばかりが注目されたことも、政子にとっては夫の権威が揺らいでいる証拠のように感じられたのでしょう。病院での教授の序列が、そのまま妻たちの人間関係にも持ち込まれる世界では、夫の退官は家族の立場にも影響する出来事でした。
娘の佐枝子に対しても、東は自分が現役教授でいる間に結婚してほしいという気持ちを口にします。相手の医師としての地位を気にする姿からは、大学病院の中で築いてきた価値観が家庭生活にまで染み込んでいることがうかがえます。
しかし佐枝子は、両親と同じようには物事を見ていません。肩書きや世間体よりも、その人が何を大切にして生きているかに関心を向ける彼女の姿勢は、東家の中にありながら、父とは異なる価値観を示していました。
東は家庭に戻っても、教授という肩書きから自由になれなかったのかもしれません。財前を後任にすれば、自分を追い越していった弟子の成功を目の当たりにすることになる。別の候補を迎えれば、少なくとも自分の意思が医局の未来に残る。その思いが、菊川を擁立する決意をより強くしていったように感じます。
教授選で東教授が失ったもの
東と財前の対立は、やがて学内の有力者や医師会、財前の義父である又一まで巻き込んだ大きな権力闘争になります。教授を決めるための選挙でありながら、候補者の研究業績や医師としての能力だけでは結果が決まらない状況になっていきました。
東は外部候補を擁立するために東都大学の船尾教授を頼り、財前は鵜飼医学部長や又一の力を借りて支持を広げます。互いに相手の動きを警戒し、誰がどちらにつくのかによって態度を変える教授たちの姿は、大学病院という組織の閉鎖性を浮かび上がらせます。
もともと財前の政治的な振る舞いを嫌っていた東自身も、選挙を進めるうちに、相手と似たような駆け引きから抜け出せなくなっていきました。
棄権と決選投票

第9話で印象に残るのが、東教授が教授選の投票を突然棄権する場面です。教授会はその行動に驚き、財前も知らせを受けると、診察中の患者を置いて動き出してしまいます。
財前は東の棄権を、自分を不利にするための芝居だと受け取ります。師の行動を最初から策略として疑うところに、それまでの二人の関係がどれほど壊れていたかが表れていました。
棄権が東の良心によるものだったのか、それとも票の流れを変えるための計算だったのか。この場面を一つの理由だけで説明することは難しいと思います。東は選挙の公正さを完全に守れる立場ではなくなっていましたし、それでも財前を後任にしたくない気持ちを捨てきれずにいたからです。
最初の投票ではどの候補も過半数を獲得できず、選挙は決選投票へ持ち越されます。その過程で東自身も、支持を得るために名誉職などを持ち出す駆け引きに関わっていきました。
さらに、東が頼りにしていた船尾は、選挙が不利になると東の手腕を厳しく責めます。自分が招いた協力者からも十分な敬意を払われず、東は次第に追い詰められていきました。
東が守りたかったのは、単なる一つの椅子だけではなかったはずです。自分が長年培ってきた人脈や判断力、教授としての影響力が、退官を前にしてまだ通用することを確かめたかったのではないでしょうか。
しかし選挙が進むにつれ、その影響力にも限界があることが明らかになります。東は財前を抑えるために争いへ踏み込みましたが、その争いの中で、自分自身の尊厳まで傷つけることになってしまったように見えます。
退官日に重なった庸平の手術
最終的に教授の座を手にしたのは財前でした。そして財前は、食道がん患者である佐々木庸平の手術日を、東教授の退官日に設定します。
東にとって退官日は、長年勤めた大学病院を去る大切な節目です。しかし同じ日に、財前は次の第一外科を担う外科医として手術室に立とうとしていました。この日程の重なりには、二人の立場が入れ替わったことを強く意識させる意味があります。
ただし、財前が東への復讐だけを目的として手術日を決めた、と断定するのは慎重であるべきでしょう。物語は、財前の野心や東への反発を描く一方で、患者の手術をめぐる医療上の問題も同時に進めているからです。
その手術を控え、柳原は庸平の肺に写った影を気にかけ、追加検査の必要性を進言します。里見も同じ懸念を伝えますが、財前は炎症性の変化だと判断し、予定どおり手術へ進みました。
教授選に勝った財前は、自分の判断に対してますます強い自信を持つようになっていました。しかし、その自信が他者からの疑問を受け止めにくくさせたのであれば、東が最初の総回診で危惧していた問題が、別の形で表面化したとも考えられます。
ここで重要なのは、東が正しかったから財前が誤った、という単純な構図ではありません。東もまた自分の判断に固執し、財前と対立を深めてきた人物です。二人の間で繰り返された意地の張り合いが、患者を中心に考えるべき医療の場へ影を落としていったことに、この物語の厳しさがあります。
教授の肩書きを手にした財前と、それを失った東。しかし、二人の本当の評価がどこで決まるのかは、まだこの時点では明らかになっていませんでした。
教授選から医療裁判へとつながる詳しい流れは、『白い巨塔』2003年版全21話のあらすじと見どころでも整理しています。
佐枝子と里見が開いた別の道
財前が教授に就任し、東が大学を去ったあと、物語の中心は佐々木庸平の死をめぐる医療裁判へ移っていきます。財前のもとで働いていた柳原や看護師の亀山君子、そして患者の立場を大切にする里見は、それぞれ異なる立場から事件と向き合うことになります。
このとき、東教授の娘である佐枝子は、医療裁判を扱う関口弁護士の事務所で働くようになっていました。教授の娘として大切に育てられてきた彼女が、大学病院を訴える患者家族の苦しみに触れるようになったことは、東家にとっても大きな変化だったと思います。
佐枝子は、父の元教え子である財前を守ろうとするのではなく、夫を失ったよし江たちが何を知りたいのかに目を向けていきます。かつて医師の地位や家柄を重んじていた東にとって、娘の行動は簡単に受け入れられるものではなかったでしょう。
けれども、佐枝子が関口の仕事を手伝い、里見が患者の立場から真実を考え続けたことで、東の前には教授時代とは違う問題が現れます。そこでは誰が教授になるかではなく、一人の患者に対して医師たちが何をしたのかが問われていました。
東はすでに大学を離れています。財前との争いから距離を置き、静かな生活を続けることもできたはずです。それでも関口や佐枝子から協力を求められたことで、東は再び、かつての教え子が関わる問題と向き合わなければならなくなります。
控訴審で証人に立つ決意

第17話では、控訴審を続ける関口が証言者を探し、里見の助言を受けて東を訪ねます。しかし東は、最初から進んで裁判に関わろうとしたわけではありません。
転機になるのは第18話です。東は里見と会い、財前の診療に問題があったと確信したことを佐枝子に伝えます。そして関口に鑑定医を紹介し、裁判に協力し始めました。
それに対して財前側は、東が紹介した医師に働きかけ、協力を断念させます。財前は東の家まで訪れ、裁判への関与をやめるよう求めました。大学を去った恩師に対しても圧力をかけようとする財前の行動からは、教授という立場を得たことで、かつて自分が恐れていた権力を今度は自ら使う側になったことが感じられます。
そして第19話、東はついに控訴審の証言台に立ちます。財前側の国平弁護士は、東が財前を個人的に憎んでいるから不利な証言をするのではないかと追及しました。
東にとって、この問いは決して簡単なものではありません。財前との間に確執があったことは事実であり、教授選で感情的な対立を繰り広げてきた過去を消すことはできないからです。
それでも東は、自分たちの確執を認めたうえで、恨みを晴らすためではなく、これからの医療につなげるために証言しているという立場を示します。
私は、この場面に東教授の大きな変化があると思います。かつては財前に弱みを見せたくないために意地を張り、教授としての体面を守ろうとしていた人物が、ここでは自分に不利な過去を隠さずに語っているからです。
もちろん、証言したからといって、教授選での行動がすべて正当化されるわけではありません。しかし東が、財前への個人的な感情と医療上の問題を区別しようとしたことには意味があります。
教授時代の東であれば、財前に対して自分の正しさを証明することが何より大切だったかもしれません。けれども法廷での東は、自分が勝つか負けるかではなく、将来同じような問題を繰り返さないことを理由として語ります。
東が初めて、財前との勝負から一歩離れた場所に立てた場面だったのではないでしょうか。
恩師が財前の手術台に立つまで
『白い巨塔』の最終回で、東教授と財前の関係は思いがけない形で再び交わります。控訴審で厳しい判決を受けた財前が倒れ、検査の結果、今度は彼自身が重い病気を抱えていることが明らかになるのです。

数々の難手術を成功させ、患者の命を自分の腕で救ってきた財前が、今度は手術台に横たわる立場になります。そして、その手術を執刀するのが、かつて激しく対立した恩師の東貞蔵でした。
教授選で争い、医療裁判では異なる立場に立った二人が、最後には執刀医と患者という関係で向き合う。この展開には、肩書きや権力を超えた医師の仕事の重さが表れているように思えます。
手術で知らされた現実
財前の手術が始まり、東は胸を開きます。しかし、そこで確認された病状は事前に考えられていたよりもはるかに深刻なものでした。がんは胸膜へ広がっており、原発巣を切除しても治療の意味がない状態だったのです。
東は切除を断念し、胸を閉じる判断をします。かつて手術の腕前を競うように向き合っていた二人ですが、この場面には勝者も敗者もいません。そこにあるのは、優れた技術を持った外科医でも、病気の進行を止められないことがあるという現実だけです。
東がどれほど複雑な思いで手術に臨んだのか、すべてを言葉にすることはできません。ただ、財前を救うために執刀し、切除できないと判断したとき、目の前の患者がかつての教え子であることから逃れることはできなかったでしょう。
さらに術後、東は財前に本当の病状を知らせるべきかという問題にも直面します。義父の又一は本人への告知を望まず、鵜飼もその意向を受け入れますが、東は、がんの専門家である財前に真実を隠し続けられるのかと疑問を示します。
ここで思い出されるのが、佐々木庸平の裁判です。あの裁判では、患者が十分な説明を受け、自分の治療について判断する機会を持てたのかが重要な問題になりました。
財前自身が患者となったときにも、本人へ何を伝えるべきかという問いが現れます。医師として正しいと信じていた判断を積み重ねてきた財前が、自分の病状については周囲から事実を隠される。その皮肉は、物語全体に通じる大きなテーマを浮かび上がらせています。
東は財前を救いきることができませんでした。しかし、彼が手術を引き受けたことによって、二人の関係は教授選での勝敗だけでは終わらなかったのだと感じます。
最初の総回診では、東は財前を見下ろす立場にいました。やがて財前が教授の座を得ると、二人の立場は逆転します。そして最後には、財前が東に自分の命を委ねることになるのです。
医師として技術を高めること、大学で地位を得ること、患者の命と向き合うこと。その三つは必ずしも同じ方向を向いているわけではないと、この師弟関係は教えてくれるように思います。
よくある質問
東教授について、物語を振り返る際に気になりやすい点を整理します。
東教授はなぜ財前を嫌った?
財前の傲慢な振る舞いへの不信感に加え、優秀な弟子が自分の権威を脅かすことへの嫉妬や、退官後の第一外科を自分の考えに沿った形で残したいという思いが重なっていたと考えられます。
東教授が推薦した菊川とは?
東が財前に代わる後任候補として迎えようとした、石川大学の外科医・菊川昇です。2003年版では沢村一樹さんが演じています。
東教授は財前を許したの?
作中で二人の感情が完全に整理されたとは言い切れません。ただし、東は控訴審で個人的な確執を超えて医療上の問題に向き合い、最終回では財前の手術を執刀しています。対立だけで終わらなかったことが重要だと思います。
東教授は最終回で何をした?
財前の手術を担当しましたが、開胸後に想定以上のがんの広がりが確認されたため、切除を断念しました。その後、財前への病状告知をめぐる判断にも関わっています。
東教授を演じた俳優は?
唐沢寿明さん主演の2003年版では石坂浩二さんです。なお、田宮二郎さん主演の1978年のテレビドラマ版では、中村伸郎さんが東貞蔵を演じています。
東教授が最後に守ろうとしたもの
東教授は、最初から立派な師として描かれていたわけではありません。財前の才能を認めながら、その才能が自分の立場を脅かすことに耐えられず、教授選では自分の感情を優先してしまう場面もありました。

しかし、退官によって教授の椅子を失い、佐枝子や里見を通して医療裁判に向き合うようになってから、東の行動は少しずつ変わっていきます。法廷では財前との確執を隠さず、医療の未来のために証言する道を選びました。
そして最終回、東は財前の手術を執刀します。かつて自分を追い越そうとした弟子を、今度は一人の患者として目の前に迎えるのです。
私は、東教授の変化を考えるうえで、この手術が最も重い意味を持っていると感じます。東は財前の病気を治すことができませんでしたが、執刀医として果たすべき役割から逃げませんでした。二人の間にあった過去の対立を消すことはできなくても、目の前にいる人間を救おうとする医師としての仕事に向き合ったのです。
第1話の総回診では、東は財前の腕を戒める教授でした。けれども最終回の手術室では、教授の地位も、選挙の勝敗も、もはや意味を持ちません。そこにいるのは、長い年月を外科医として生きてきた東と、かつて彼のもとで学び、誰よりも高く上ろうとした財前です。
『白い巨塔』をもう一度見るなら、第1話で東が財前を叱る場面と、最終回で東が財前の手術を執刀する場面を続けて思い返してみてください。二人の間で変わったものと、最後まで変わらなかったものが、以前とは違って見えてくるのではないでしょうか。
財前の言葉や行動についてさらに振り返りたい方は、『白い巨塔』の名言・名シーン考察もあわせてご覧ください。
参考にした公式情報:フジテレビ『白い巨塔』第1話公式あらすじ、第19話公式あらすじ、最終回公式あらすじ。重要な展開は各話の公式情報をもとに確認しています。

