こんにちは、nanaです。
2022年に放送され大きな話題を呼んだドラマ、ミステリと言う勿れの第4話を覚えていますでしょうか。菅田将暉さん演じる久能整が、記憶喪失の爆弾犯と静かに対峙するあのエピソードです。
久しぶりに見返したり、ふと気になったりして、ミステリと言う勿れの爆弾犯は誰だったかなとか、どんな動機やネタバレだったかなと検索される方も多いのではないでしょうか。あの独特の雰囲気を持ったキャストの演技や、切なすぎる結末は一度見ると忘れられないインパクトがありますよね。
この記事では、そんな第4話の魅力を余すところなく振り返っていきたいと思います。
ミステリと言う勿れで爆弾犯を演じたキャストと役柄

バスジャック事件が無事に解決し、ようやくいつもの日常に戻ったはずの主人公・久能整(くのう・ととのう)。しかし、彼を待ち受けていたのは、派手なアクションではなく、静寂の中で進行する奇妙で緊迫感のある新たな事件でした。ここでは、物語のキーマンとなる爆弾犯を演じた俳優さんの深掘りや、その特異なキャラクター設定について、ドラマファンの視点から詳しく解説していきますね。
爆弾事件が描かれる第4話のあらすじ
物語の幕開けは、インターネット上の闇サイトに投稿された、ある不穏な爆破予告から始まります。そこには、爆破場所を特定するための手がかりとして、意味深なアルファベットの暗号が添えられていました。
通常であれば警察のサイバー犯罪対策課などが処理する案件ですが、今回はあまりに難解で、大隣署の刑事たちも頭を抱えてしまいます。そこで白羽の矢が立ったのが、直前のバスジャック事件で類まれな観察眼を見せた久能整でした。
風呂光聖子刑事(伊藤沙莉)は、上司に内緒でこっそりと整に協力を求めます。この「警察が一般の大学生に頼る」という構図が、このドラマならではの面白さですよね。整くんは「僕はただの大学生です」と嫌がりますが、結局は巻き込まれてしまうのがお約束です。
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雨と詩と、奇妙な出会い

そんな中、整はカレーの材料(特にポテトサラダ用のジャガイモ)を買いに出かけた先で、雨に打たれながら土手に座り込んでいる一人の男と遭遇します。彼は傘もささず、ずぶ濡れの状態で、どこか虚ろな目で遠くを見つめていました。
「住所も名前もわからない」
そう呟く彼との会話を通じて、整は少しずつ違和感を抱き始めます。なぜ彼はここにいるのか、なぜ記憶がないのか。そして、彼が口ずさむ詩人・三好達治の詩の意味とは何なのか。整の頭の中で、闇サイトの予告と目の前の男が一本の線で繋がっていく過程は、見ていて本当にゾクゾクしました。
派手な爆発シーンがあるわけではないのに、言葉のやり取りだけでここまで緊張感を高められるのは、脚本と演出の妙だなと感心してしまいます。
第4話は、派手なアクションではなく、雨音の中で交わされる静かな会話劇が中心となる、非常に心理サスペンス要素の強いエピソードです。画面のトーンも全体的に暗めで、その分、役者の表情が際立つ作りになっています。
犯人役を演じた柄本佑の評価
この難役である記憶喪失の爆弾犯・三船三千夫を演じたのは、日本映画界を牽引する実力派俳優の柄本佑(えもと たすく)さんです。雨に濡れたトレンチコート姿で、長い髪が顔にかかり、焦点の定まらない瞳で整を見つめる姿……。その立ち姿だけで「この人は只者ではない」と思わせる説得力がありました。
柄本佑さんといえば、お父様は柄本明さん、弟さんは柄本時生さん、奥様は安藤サクラさんという、まさに芸能一家・演劇一家のサラブレッドですが、その血筋云々を抜きにしても、彼の演技には独特の色気と不気味さが同居していますよね。
15年ぶりの月9帰還と「柄本佑アワー」
実はこの出演、ドラマ好きの間ではかなり大きなニュースだったんです。柄本さんにとって、フジテレビの看板枠である「月9」への出演は、2006年の『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』以来、なんと15年ぶりのことでした。
さらに面白かったのが、放送当時の番組編成の奇跡です。当時、柄本さんは同じ月曜日の夜10時から放送されていた関西テレビ制作のドラマ『ドクターホワイト』にも、メインキャストの記者役としてレギュラー出演していました。
つまり、夜9時の『ミステリと言う勿れ』で犯人役を演じた直後、チャンネルを変えると夜10時の『ドクターホワイト』で正義感のある記者を演じているという状況が発生したのです。SNS上では「9時は爆弾犯で10時は記者!」「月曜の夜はまさに柄本佑アワーだ」「感情が追いつかない」と、この異例のW出演が大きな話題になりました。
こういった放送外の背景も含めて楽しめたのが、リアルタイム視聴組の特権だったかもしれませんね。
記憶喪失の男・三船三千夫の正体
柄本さんが演じた三船三千夫(みふね・みちお)というキャラクターは、非常に複雑で繊細な設定を持っています。彼は、ある場所に時限爆弾を仕掛けた直後、不運にも交通事故(あるいは転倒)に遭い、ショックで一時的な記憶喪失に陥ってしまった男なんです。
自分が誰で、ここがどこで、何をしに来たのか。それらがすっぽりと抜け落ちている状態です。しかし、人間の脳というのは不思議なもので、すべての記憶が消えるわけではありません。「数字の3にこだわっていたこと」や「ある詩の一節」など、断片的な情報は残っているんですよね。
整が見抜いた「嘘のない」演技
整と出会ったとき、彼は無防備な迷子のように見えました。しかし、整は彼の些細な反応を見逃しませんでした。
例えば、整が最初に声をかけたときのアプローチです。普通なら「大丈夫ですか?」と声をかけるところを、整はあえて「どうかしましたか?」と問いかけます。これは、「大丈夫ですか?」と聞かれると、人は反射的に「大丈夫です」と答えてしまう心理(防衛本能)を理解しているからです。
三船は記憶がないため、嘘をつくことができません。計算や駆け引きができない「剥き出し」の状態です。だからこそ、ふとした瞬間に漏らす言葉が真実味を帯びていて、それが逆に恐ろしさを醸し出していました。柄本佑さんは、この「何も覚えていないけれど、何か重大なことを忘れている焦燥感」を目線の動きや指先の震えで見事に表現していて、見ているこちらまでヒリヒリするような緊張感が伝わってきました。
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菅田将暉と柄本佑の共演秘話

主演の菅田将暉さんと柄本佑さんの共演は、映画『アルキメデスの大戦』以来2度目となります。前回の共演では、軍人と天才数学者という立場で激しく感情をぶつけ合うシーンが多かったそうですが、今回は打って変わって雨の中での「静寂」の演技合戦となりました。
この二人の組み合わせ、ドラマファンにとってはたまらないですよね。どちらも「憑依型」と呼ばれることがありますが、タイプは少し違う気がします。菅田さんは役の感情を爆発させる瞬発力が凄まじい一方で、柄本さんは役の背景にある湿度や匂いまで漂わせるような持続力があるような印象です。
お互いをリスペクトする関係性
インタビュー記事などを拝見すると、お互いに役者として深いリスペクトを持っていることが分かります。柄本さんは菅田さんの演技について「雑味のないまっすぐさがある」と称賛しています。
整というキャラクターは、淡々と正論を述べるため、演じ方によっては「ただの理屈っぽい嫌な奴」になりかねません。しかし、菅田さんが演じることで、そこにあどけなさや純粋な好奇心が加わり、愛されるキャラクターになっています。
今回の第4話では、そんな「まっすぐな整」と「歪んでしまった三船」が対比的に描かれています。
二人の実力派が向かい合って話しているだけで、派手なBGMやカメラワークがなくても、ドラマの画が持つ強度がグッと上がるのを感じました。まさに「演技の頂上決戦」と言っても過言ではない、ドラマ史に残る名シーンの連続だったと思います。
犯行予告の暗号と解読のヒント
ミステリ作品の醍醐味といえば、やはり謎解きですよね。第4話で視聴者の知的好奇心をくすぐったのが、犯行予告に使われたアルファベットの暗号です。整くんの鮮やかな推理が光りましたが、これは単なるアナグラム(文字の並べ替え)ではありませんでした。
犯人が提示した暗号は、一見すると無意味な文字列の羅列です。しかし、整はそこに「犯人の趣味嗜好」が反映されていることを見抜きます。そう、犯人は熱烈な「ミステリ小説オタク」だったのです。
| 予告の順番 | 提示された暗号 | 整の解読とロジック | 関連するミステリ作品 |
|---|---|---|---|
| 第1の予告 | KUROTOKAGE | そのまま読むと「黒蜥蜴」 → 爆破場所:お店「江戸川」 | 江戸川乱歩『黒蜥蜴』 |
| 第2の予告 | YNOHIGEKI | そのまま読むと「Yの悲劇」 → 爆破場所:ビル名「クイーン」 | エラリー・クイーン『Yの悲劇』 |
| 第3の予告 | (数字の3) | 三船の名前と記憶のリンク → 爆破場所:小学校の音楽室 | 三船の個人的な記憶 |
このように、犯行予告は有名なミステリ作家やその代表作に関連する場所に仕掛けられていました。整が「これは江戸川乱歩ですね」「次はエラリー・クイーンですね」と次々に看破していく様子は痛快でした。
この謎解きの面白いところは、知識があれば解けるけれど、知識がなければただの文字化けに見えるという点です。整自身も読書家であるため、犯人との間に奇妙な「共通言語」が生まれていたとも言えます。犯人は無意識のうちに、自分の言葉を理解してくれる誰かを求めていたのかもしれません。
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ミステリと言う勿れの爆弾犯に関するネタバレ解説

ここからは、物語の核心部分、いわゆるネタバレを大いに含んだ詳細な解説になります。三船がなぜ爆弾を仕掛けようと思ったのか、そして整が導き出した「切なすぎる真実」とは何だったのか。まだドラマを見ておらず、結末を知りたくないという方は、ここでページを閉じてくださいね。
犯行の動機は母への複雑な愛憎
三船が爆弾を仕掛けた動機。それは、よくある「社会への不満」や「金銭目的」などではありませんでした。もっと個人的で、もっと根深い、自分自身の「過去」を消し去るための自爆テロに近い行為だったのです。
彼は幼い頃、母親に捨てられたと思い込んで生きてきました。親の愛情を知らず、身なりも整わず、学校ではいじめの対象となり、楽しいことや嬉しいことなんて何ひとつ知らないまま大人になってしまった三船。彼の人生は、常に孤独と隣り合わせでした。
そんな彼にとって、自分を捨てた母親への「憎しみ」は、皮肉にも生きるためのエネルギーそのものだったのかもしれません。「いつか見返してやる」「いつか復讐してやる」という暗い情熱が、彼を突き動かしていたのでしょう。
母の死と喪失感
しかし、ある日彼は知ってしまいます。憎むべき対象である母親が、自分を捨てた後、自分とは全く関係のない場所で、自分のことなど思い出しもせずに死んでしまったことを。復讐する相手がいなくなった時、彼の中に残ったのは空っぽの絶望だけでした。
「もう、何もかも消してしまいたい」
ターゲットとなった場所は、彼にとって唯一の「思い出の場所」である小学校でした。辛い記憶も、わずかな温かい記憶もすべて爆破して無にしてしまおうとしたのです。それは、世界への攻撃というよりも、自分の存在証明を消し去るための悲痛な叫びでした。
恩師の先生が実の母親という真実
しかし、整との雨の中での対話を通じて、物語は衝撃の展開を迎えます。三船の話に出てくる、彼が唯一心を許し、慕っていた小学4年生の時の担任教師。彼女こそが、実は三船を捨てたはずの実の母親だったのです。
整が静かに告げた「その先生は、あなたのお母さんですね」という言葉。この瞬間、ドラマを見ていた多くの視聴者が息を呑んだのではないでしょうか。
彼女は何らかのっぴきならない事情(おそらく経済的な理由や家庭の事情)で、息子と名乗り出て一緒に暮らすことはできませんでした。しかし、どうしても息子のことが気になり、教師という立場を借りて、生徒として息子のそばに近づき、彼を見守り続けていたのです。
不器用な母の愛
彼女が三船にしてくれたことは、教師の枠を超えていました。遅刻癖のある彼のために「時計を30分早める」ことを教えたり、一緒に夏祭りに行ったり、彼が学校でいじめられないように陰ながら守ったり……。それらはすべて、母としての精一杯の愛情表現だったのです。
三船が「捨てられた」と思い込んでいた間も、実は一番近くで愛されていた。しかし、母親は最後まで「私があなたのお母さんよ」とは言えずに亡くなってしまった。このすれ違いが、あまりにも切なすぎます。
数字の3が示す爆弾の隠し場所
クライマックスで爆弾の場所を特定する鍵となったのが、数字の「3」へのこだわりです。三船の名前には「三」が2つ入っていますよね(三船三千夫)。彼は、その恩師(母親)から「3は神聖な数字だよ。あなたの名前には3が入っていて素敵だね」と教えられていました。
整は、三船の記憶の断片と、この「3」への執着から、爆弾が仕掛けられた場所を推理します。それは、恩師との思い出が最も詰まった場所である、小学校の音楽室でした。
そして、爆弾が隠されていたのはグランドピアノの中。三船にとって、そこは母との繋がりを感じられる神聖な場所でありながら、同時に憎しみの対象でもあった母(自分を捨てたと思い込んでいた女性)の記憶が残る場所。この「愛したいけれど憎い」「忘れたいけれど縋りたい」というアンビバレントな感情が、爆弾という破壊的な形になってしまったんですね。
原作とドラマ版の演出の違い
原作マンガ(田村由美先生)を読んでいるファンの方は気づいたかもしれませんが、この第4話のドラマ版では、ストーリー構成にいくつかの変更点が加えられていました。特に大きいのが、警察(風呂光刑事たち)の関わり方です。
原作のエピソードでは、基本的に整と三船の対話だけで静かに物語が進行し、警察が大きく介入することはありません。しかし、ドラマ版では風呂光刑事が整のSOSに気づいて現場へ急行したり、暗号解読のサポートをしたりと、「チームプレー」の要素がかなり強められています。
これには賛否両論あったようですが、個人的にはドラマ版のアレンジも悪くなかったと思います。連続ドラマとして見る場合、主人公である整くんが孤独に戦うだけでなく、風呂光刑事との信頼関係が築かれていく様子(バディ感)が描かれることで、物語に厚みが出ていました。
また、舞台設定も原作の具体的な地方都市から、ドラマオリジナルの架空都市「大隣市」へと変更され、全体的に「雨」の演出がより印象的に使われていました。雨音がBGM代わりになり、二人の会話を外界から遮断するカーテンのような役割を果たしていたのがとても美しかったです。
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涙なしでは見られない事件の最後

事件の結末は、悲しくも、一筋の光が見える温かいものでした。整は、三船がわざわざ解読できるような暗号をネットに残した理由を鋭く分析します。
「あなたは、爆発してほしくなかったんじゃないですか? 誰かに止めてほしかった。見つけてほしかったんじゃないですか?」
そして、核心を突く一言を放ちます。
「あなたは本当は、お母さんが大好きなんですね」
整のこの言葉で、三船の凍りついていた心は一気に溶かされました。記憶を取り戻した三船(柄本佑さん)が、母の愛を知り、その場に崩れ落ちるようにして号泣するシーン。あの柄本さんの演技には、画面の前で私も思わずもらい泣きしてしまいました。言葉にならない嗚咽が、彼のこれまでの孤独な人生を物語っているようで、胸が締め付けられました。
最終的に爆弾は解除され、最悪の事態は免れました。雨上がりの空のような、少しの救いを感じさせるラストシーン。三船の罪は消えませんが、彼の心にあった「母に捨てられた」という地獄からは解放されたのだと信じたいですね。
ミステリと言う勿れの爆弾犯まとめ
今回は、ドラマ『ミステリと言う勿れ』の第4話、爆弾犯エピソードについて、キャストの柄本佑さんの凄まじい演技や、物語の裏に隠された深い動機について徹底的に解説しました。
このエピソードは、単なる謎解きミステリーとしてだけでなく、親子の絆や記憶の真実を描いた重厚なヒューマンドラマとしても、シリーズ屈指の名作だと断言できます。整くんの「事実は一つでも、真実は人の数だけある」という言葉が、この事件を通してより一層深く心に響きます。
もしこの記事を読んで「もう一度見返したい!」「あのシーンを確認したい!」と思った方は、ぜひ動画配信サービス(FODなど)でチェックしてみてくださいね。結末を知った上で見ると、冒頭の三船の表情の意味がまた違って見えてくるはずです。それでは、また次の記事でお会いしましょう。


