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『HERO』久利生と雨宮はなぜ結婚しなかった?2001年から映画の結末まで

『HERO』久利生と雨宮はなぜ結婚しなかった?海が見える窓辺に検察資料、二つのマグカップ、石垣島への搭乗券と日焼け止め HERO

こんにちは、nanaです。

※この記事は『HERO』2001年版、2007年・2015年の映画、2014年版の重要な展開と結末に触れています。未視聴の方はネタバレにご注意ください。

『HERO』の久利生公平と雨宮舞子は、最初から息の合う二人だったわけではありません。優秀な検事のもとで経験を積みたいと願っていた雨宮にとって、ジーンズ姿で現れ、周囲が大きな事件に追われていても目の前の小さな事件にこだわる久利生は、期待していた検事像からずいぶん外れた人物だったのでしょう。

それでも雨宮は、久利生のそばを離れませんでした。書類だけで判断せず、自分が納得できるまで現場へ足を運ぶ。最初はそんな久利生に振り回されていた雨宮が、いつしか誰よりも彼の考えを理解するようになっていくところに、この二人の関係の面白さがあります。

2001年の最終回で雨宮が石垣島まで会いに行ったとき、二人はもう単なる検事と事務官ではなくなっていました。そして、6年後の映画でようやく交わされたキスを見れば、このまま恋人として幸せになってほしいと思った方も多かったのではないでしょうか。

ところが、2014年の続編で久利生の隣に雨宮の姿はなく、2015年の映画では、かつての恋人同士がそれぞれ別の場所で働く検事として再会します。あれほど近づいた二人が、なぜ結婚という結末を迎えなかったのか。そこには久利生の不器用さだけではなく、彼と出会ったことで変わっていった雨宮自身の人生も関わっているように感じます。

この記事では、『HERO』の久利生と雨宮が出会いからどのように心を通わせ、やがて別々の道を歩くようになったのかを、2001年のドラマから2015年の映画までたどりながら考察します。

この記事でわかること

まず、この記事で押さえておきたいポイントを4つにまとめます。

  • 久利生と雨宮が反発しながらも惹かれ合うようになった理由
  • 2001年最終回の石垣島と2007年映画のキスが持つ意味
  • 2014年の別離と2015年映画で描かれた二人のその後
  • 久利生と雨宮が結婚しなかった結末をどう受け止められるのか

優秀な検事だと聞いていたのに

2001年の『HERO』第1話「最悪の出会い」で、雨宮舞子は自分から久利生公平の担当事務官になることを希望します。雨宮には将来、副検事になりたいという目標があり、優秀だと噂されている久利生のもとで働くことは、その夢に近づくためのよい経験になるはずでした。

ところが、実際に赴任してきた久利生は、検事と聞いて思い浮かべるような堅苦しさとは無縁の男性です。ラフな服装で現れ、通販番組を楽しみ、周囲の検事たちが気にする慣習にもほとんど頓着しません。何より雨宮を困惑させたのは、仕事の進め方まで彼女の予想と違っていたことでした。

雨宮は決して仕事を怠けたい女性ではありません。むしろ真面目で、任されたことには一生懸命取り組む人です。ただ、努力する方向がはっきりしているからこそ、何を考えているのか分かりにくい久利生の行動に戸惑ってしまうのでしょう。自分が積み上げてきた常識が、彼の前では次々と通用しなくなっていきます。

それでも久利生は、雨宮に気に入られようと振る舞いを変えたり、自分の優秀さを説明したりしません。彼が気にしているのは、目の前にいる人が本当のことを話しているのか、事件の裏側に見落としている事実がないかということでした。

最初の雨宮は、そんな久利生の姿を理解できずにいますが、彼の行動を追っていくうちに、次第に自分が想像していた「優秀な検事」とは違う強さに触れていくことになります。

明るい検察庁の廊下から見える、久利生を思わせる茶色いダウンジャケットと雨宮の黒いバッグ

下着泥棒の事件を軽く扱わない人

久利生が城西支部に赴任したころ、周囲は大物政治家が関わる事件に追われていました。そんななかで久利生が向き合うことになったのが、下着泥棒の事件です。大きな事件を担当する検事たちと比べれば、ずいぶん地味な仕事に見えたかもしれません。

けれども久利生は、事件の大小で自分の姿勢を変えませんでした。たとえ小さく見える事件でも、そこには被害を受けた人がいて、疑いをかけられた人がいます。書類の内容だけでは分からないことがあれば、実際に足を運んで確かめようとするのです。

雨宮からすれば、どうしてそこまで手間をかけるのかと思うこともあったでしょう。早く仕事を片づけるための経験を積みたいのに、久利生についていくと、思いがけない場所へ出かけることになり、調べることも増えてしまいます。

ただ、彼の捜査を最後まで見ていると、面倒に思えた寄り道が無意味ではなかったことに気づかされます。誰かが見落としていた小さな違和感を拾い上げ、簡単には事件を終わらせない久利生の姿勢は、雨宮が目指していた検事という仕事の見え方を少しずつ変えていったのではないでしょうか。

最初から憧れていた相手なら、その人の考え方を受け入れることは難しくなかったかもしれません。でも、雨宮の場合は違います。理解できないことに腹を立て、ときには言い争いながら、それでも目の前の久利生を見続けてきました。だからこそ、彼への信頼も簡単には揺らがないものになっていったように思います。

下着泥棒事件を連想させる住宅のベランダの洗濯物と空いた洗濯ばさみ

いつから二人は相棒になったのか

久利生と雨宮の関係が好きなのは、どちらか一方が相手に合わせて変わっていくわけではないところです。雨宮は久利生を尊敬するようになっても、何でも言うことを聞く事務官にはなりませんし、久利生も彼女が怒るからといって自分の捜査をやめることはありません。

同じ事件を追いながら、何度も意見がぶつかり、ときには相手の考えに納得できない。それでも事件が難しい方向へ進んでいくほど、二人の間には、言葉にしなくても通じるものが増えていきます。

久利生は一度気になったことがあると、周囲がどう思おうと調べずにはいられません。その仕事を支える雨宮には、資料を集め、関係者への連絡を取り、捜査が滞らないように動く役割があります。久利生だけを見ていると彼の自由な捜査が目立ちますが、その後ろにはいつも雨宮の仕事があるのです。

最初は久利生のペースに合わせることさえ難しかった雨宮が、やがて彼の次の行動を予想し、自分から必要なことを考えるようになる。そうした日々を重ねるうち、久利生のほうも雨宮がそばにいることを当たり前のように受け止めていきます。

その当たり前という感覚が、二人の関係を少し厄介にしていたのかもしれません。仕事では誰よりも頼りにしているのに、個人的な気持ちとなると、肝心なところをなかなか言葉にできないのです。

雨宮だけが見ていた久利生の素顔

城西支部の人たちも、事件を重ねるうちに久利生の仕事ぶりを認めるようになります。ただ、毎日すぐそばで彼の行動に付き合っている雨宮には、ほかの同僚とは少し違う時間が流れていました。

現場へ向かう道中、何気なく交わす会話や、仕事が思うように進まないときの苛立ち。久利生が人前では説明しない考えも、雨宮はその行動から少しずつ理解していきます。反対に久利生も、真面目で堅い印象の雨宮が、時折見せる感情の揺れや不器用さを知っていったのでしょう。

だから二人が言い争っていても、どこか安心して見ていられるのだと思います。本当に相手を理解できないままなら、あれほど遠慮なく意見をぶつけることはできません。雨宮は久利生の仕事を理解しているからこそ反論できますし、久利生も雨宮が本気で向き合っていることを知っているから、簡単にあしらったりしないのです。

雨宮にとって久利生が特別な存在になっていくのは、検事として尊敬できるようになったことだけが理由ではないのでしょう。面倒なところも、不器用なところも知っている。それでも同じ事件を追い、彼の考えを理解したいと思う時間が、いつの間にか仕事だけでは説明できない気持ちへ変わっていたように感じます。

最終回、雨宮が石垣島へ向かった理由

2001年の最終回「最後の事件」で、久利生は石垣島への異動を命じられます。城西支部で最後に担当することになったのは、サッカースタジアムの警備員が殺害された事件でした。

その事件の背後には政治家や企業をめぐる複雑な事情が見え始めますが、久利生は異動が決まっているからといって捜査への姿勢を変えません。最後まで被害者に何が起きたのかを知ろうとし、城西支部の仲間たちも、彼のために動くようになります。

赴任してきたころには周囲から浮いていた久利生のために、今度はみんなが協力している。その変化だけでも胸が熱くなりますが、雨宮にとっては事件が終われば久利生との別れが待っています。

久利生は相変わらず、自分の異動を特別な出来事のようには扱いません。大げさな別れの言葉を残すわけでもなく、いつもの調子で去ろうとします。けれども雨宮には、彼と過ごした時間をそんなに簡単に終わらせることなどできなかったのでしょう。

サッカーの約束と日焼け止め

最終回で印象に残るのが、雨宮と久利生が交わしていたサッカーの約束です。雨宮は、カメルーン代表選手の名前を覚えるという、二人だけのやり取りを忘れていませんでした。

久利生を追いかけ、覚えた名前を一人ずつ口にしていく雨宮の姿には、仕事中とは違う必死さがあります。普段なら言いたいことをはっきり言えるのに、このときの雨宮は、覚えた選手の名前を並べることで、離れてしまう久利生との時間をつなぎ止めようとしているようにも見えます。

そして久利生が彼女に渡すのは、通販で手に入れた日焼け止めです。検事らしくない趣味として描かれてきた通販グッズが、ここでは思いがけず二人の気持ちをつなぐ小道具になっています。

言葉で気持ちを伝えるのは苦手でも、久利生は雨宮のことを何も考えていなかったわけではありません。石垣島での日差しを気にかけるような何気ないやり取りに、彼らしい優しさがにじんでいます。ただ、その優しさが恋人としての約束なのかどうかは、雨宮にも分からなかったのかもしれません。

物語の最後、石垣島で事件を調べている久利生の前に、雨宮が姿を現します。彼女が持っている日焼け止めを見れば、東京で交わしたあのやり取りを大切にしていたことが伝わってきますし、久利生もまた、思いがけない再会を嬉しそうに受け止めています。

私は、この場面で雨宮が自分から石垣島へ向かったことが好きです。久利生から明確な返事をもらったわけではないのに、会いたいという自分の気持ちに従って、遠い場所まで来てしまう。それまで真面目に物事を考え、決められた道を進もうとしていた雨宮が、初めて自分の感情を優先して動いたようにも見えるからです。

二人がその場で恋人になるという明確な結末は描かれませんでしたが、互いにとって特別な存在になっていることは十分に伝わってきます。だからこそ、続きが描かれるなら今度こそ幸せになってほしいと願わずにはいられませんでした。

青空のサッカースタジアムで芝生に置かれたサッカーボールと雨宮が覚えた約束を表す見出し

2007年映画、6年越しに交わしたキス

2007年公開の映画『HERO』では、久利生と雨宮が再び城西支部で同じ事件を追います。ただ、石垣島での再会から二人の恋愛が順調に進んだわけではありませんでした。

あのあと久利生から十分な連絡がなかったことに、雨宮は不満を抱いています。石垣島まで会いに行くほどの気持ちを見せたのに、相手は相変わらず仕事に夢中で、恋人らしい関係を築こうとする様子も乏しい。そんな久利生を前にすれば、雨宮が素直になれなくなるのも分かる気がします。

久利生は仕事では、どんなに難しい事件でも曖昧なまま終わらせることを嫌います。ところが雨宮との関係となると、自分の気持ちをきちんと伝えないまま時間が過ぎてしまう。その不器用さが、二人の距離を縮めたり遠ざけたりしていたのでしょう。

映画で久利生が担当するのは、一見すると単純な傷害致死事件の裁判です。しかし、被告人が無罪を主張したことで状況は一変し、敏腕弁護士の蒲生一臣が久利生の前に立ちはだかります。さらに事件の背後には、大物政治家の贈収賄事件につながる事情も浮かび上がってきます。

久利生は周囲からの圧力に左右されず、自分の担当事件の真実を確かめようとします。そして、証拠を求めて韓国・釜山へ向かうことになったとき、やはりその隣には雨宮がいました。

釜山で見えた変わらない信頼

釜山での捜査では、日本とは勝手の違う場所で証拠を集めなければならず、久利生と雨宮は現地の協力を得ながら事件を追います。雨宮は久利生に振り回されながらも、必要なことを考え、同じ方向を向いて動いています。

二人の私的な関係はぎこちないままなのに、仕事となれば息が合うところが、なんとも『HERO』らしいですね。久利生が次に何を確かめようとするのか、雨宮にはある程度想像がつくのでしょう。だからこそ、文句を言いながらも彼の捜査を支えることができます。

久利生にとっても雨宮は、単に仕事を補助してくれる人ではなくなっていました。彼がどれだけ無茶だと思われる行動をしても、その奥にある考えを理解してくれる相手がいる。それは簡単に得られる信頼ではありません。

一方で、雨宮にしてみれば、仕事のことならこんなにも通じ合えるのに、どうして自分への気持ちは言葉にしてくれないのかと思うこともあったでしょう。久利生の仕事を理解しているからこそ、彼の忙しさも分かってしまう。だから簡単に責めることもできず、それでも寂しさは残ってしまうのだと思います。

二人がなかなか恋人として落ち着かないのは、気持ちが足りないからというより、互いの大切なものをよく知っているからこその難しさだったのかもしれません。

翻訳機が伝えた久利生の気持ち

そんな二人の関係が大きく動くのが、映画の終盤に描かれるバーでの場面です。

韓国で出会った検事カン・ミンウが久利生に伝えた言葉は、その場では意味が分かりませんでした。ところが、いつものバーで翻訳機を通してその意味が分かると、久利生は雨宮に自分の気持ちを示します。

そして二人はキスを交わします。

それまで何度もすれ違い、肝心なところを言葉にしなかった久利生が、ようやく雨宮への思いを伝えた瞬間でした。2001年の最終回で雨宮が石垣島まで会いに行ってから、ずいぶん長い時間が過ぎています。その間、彼女がどれほど久利生の言葉を待っていたのかを思うと、ようやく気持ちが届いたようで嬉しくなります。

ただ、あのキスが二人の関係をどこまで変えたのかは、映画の中では描かれません。気持ちが通じ合ったことは確かでも、それから毎日どんな時間を過ごし、離れているときにどう連絡を取り合ったのかまでは分からないのです。

それでも当時の二人を見ていれば、今度こそ恋人として歩き出してくれるのではないかと期待したくなります。雨宮がずっと求めていたものに久利生が応え、ようやく同じ場所に立てたように見えたからです。

だからこそ、2014年の続編で雨宮が久利生の隣にいなかったことには、少なからず寂しさがありました。

コの字型の木製カウンターがある暖かなバーと携帯型翻訳機、ようやく届いた想いの文字

2014年、久利生の隣に雨宮がいない

2014年の連続ドラマで久利生が城西支部に戻ってくると、そこには以前とは違う顔ぶれが揃っていました。新しい担当事務官となるのは、北川景子さん演じる麻木千佳です。

雨宮とともに歩んできた2001年のシリーズや2007年の映画を知っていると、久利生の隣に別の事務官が立っている姿には、少し不思議な感覚があります。仕事の相棒が交代すること自体は珍しくありませんが、久利生と雨宮の場合は、仕事と私生活の両方で深く関わっていたからです。

続編では、雨宮が念願だった検事になったことが明らかになります。一方で、久利生との関係については、周囲の会話から二人がかつて交際していたことや、転勤などによって離れ離れになったことがうかがえます。

2007年の映画であれほどはっきりと気持ちを伝えたのに、二人は結婚していませんでした。久利生の不器用さを知っているだけに、また雨宮を寂しい思いにさせてしまったのかしら、と考えたくなるところもあります。

けれども、雨宮のその後を考えてみると、彼女は久利生の帰りを待っているだけの女性ではなかったことに気づきます。

2001年、雨宮は副検事になるという目標を持って久利生の担当になりました。あのころは検事という職業に憧れ、その仕事を近くで学ぶことで自分の将来を切り開こうとしていた女性です。そして久利生と出会い、事件の大小にこだわらず、最後まで人と向き合う仕事ぶりを見続けてきました。

その雨宮が、自分も検事となって新しい場所で働いているのです。

もちろん、検事になることと久利生との別れが必ず結びついていたとは限りません。仕事も恋愛も大切にしながら、一緒に生きる方法を選ぶことだってできたはずです。ただ、雨宮が自分の目標を諦めずに進んでいたことを知ると、彼女の人生を久利生との恋愛だけで考えることはできなくなります。

私が雨宮の不在に寂しさを覚えるのは、二人が結婚しなかったからだけではありません。あれほど一緒に事件を追ってきた二人が、今は違う場所でそれぞれの仕事をしている。その時間の長さを感じるからなのでしょう。

2014年の久利生が相変わらずの姿を見せる一方で、姿の見えない雨宮もまた、きっとどこかで事件と向き合っている。そう考えると、次に二人が会うときには、以前と同じ関係には戻らないような気もしてきます。

陽光が差す検察庁の執務室に残された無人の椅子と書類、久利生の隣に雨宮はいないの見出し

2015年映画、二人は検事として再会

2015年の映画『HERO』で、雨宮舞子が久しぶりに登場します。このときの彼女は、大阪地検難波支部で働く検事になっていました。

久利生が担当するのは、ネウストリア公国大使館の裏通りで起きた交通死亡事故です。車にはねられて亡くなった女性が、雨宮の追っていた恐喝事件の重要な証人だったことから、二人の捜査がつながっていきます。

久しぶりに顔を合わせた雨宮は、相変わらずの久利生を見てあきれます。時間が経っても彼の服装や仕事の進め方は大きく変わらず、疑問があれば納得するまで調べようとするところも昔のままです。

けれども、その久利生と向き合う雨宮は、以前とは違います。

事務官だった雨宮が自分の事件を追う

2001年の雨宮は、久利生の担当事務官として彼の捜査を支えていました。もちろん事務官にも重要な判断や仕事がありますが、事件の処分を決める検事としての責任を担っていたのは久利生です。

ところが2015年には、雨宮自身が検事として事件を追っています。久利生の担当事件と自分の事件がつながったことで、二人は協力することになりますが、今度はどちらもそれぞれの責任を持つ立場です。

そして、事件の調査が進むと、二人の前にネウストリア公国大使館という大きな壁が立ちはだかります。被害女性が亡くなる前に何があったのかを確かめたいのに、大使館には外交特権という問題があり、簡単に事情を調べることはできません。

久利生は何度断られても諦めず、被害者に何が起きたのかを知ろうとします。雨宮も、相手が大使館だからという理由で、自分の追っている事件を放り出すことはありません。

この場面を見ていると、2001年の雨宮の姿が自然と思い出されます。あのころは久利生の行動に驚き、どうしてそこまでする必要があるのかと戸惑っていた女性が、今では自分の判断で事件を追い、久利生と同じように簡単には引き下がらなくなっているのです。

雨宮は久利生の仕事をそのまままねる検事になったわけではありません。彼女には彼女の真面目さがあり、事件への向き合い方にも自分らしさがあります。ただ、目の前の事実を確かめずに終わらせないという姿勢は、久利生と長く仕事をしてきた時間の中で、彼女自身のものになっていったのでしょう。

以前は久利生のあとを追いかけていた雨宮が、今では自分の足で同じ場所に立っている。二人が並んで捜査する姿には、かつての懐かしさとともに、長い年月を経たからこそ見える変化がありました。

閉ざされた大使館風の門の前に置かれた黒い書類バッグと検事としての再会の見出し

「大好きだった」と話した雨宮の気持ち

事件が解決へ向かったあと、麻木千佳は雨宮に、久利生のことを好きだったのかと尋ねます。

雨宮は、久利生のことが大好きだったと答えます。

その答えには、かつて一緒に働き、恋人として心を通わせた相手への気持ちが残っています。ただ、雨宮は昔の思い出に浸っているわけではありません。久利生の自由すぎるところも、相手の都合をあまり考えずに動いてしまうところも、彼女はよく知っています。

それでも雨宮にとって久利生は、大切なことに気づかせてくれる人でした。

この言葉を聞くと、最初に久利生と出会ったころの雨宮の姿が思い出されます。優秀な検事のそばで働きたかった雨宮は、実際には想像と違う人に出会い、何度も振り回されました。それでも彼の捜査を見続けるうちに、検事という仕事の本当の難しさや、目の前の人と向き合うことの大切さを知っていったのです。

雨宮が久利生を大好きだったという言葉は、単に昔の恋愛を懐かしんでいるようには聞こえません。恋人として過ごした時間は戻らなくても、そこで得たものが自分の中に残っていることを、今の雨宮は分かっているのでしょう。

だからこそ、彼女の表情には寂しさだけではない落ち着きがあります。久利生が特別な人だったことを否定せず、それでも自分の人生をその人に預けようとはしない。以前の雨宮なら簡単には言えなかったかもしれない気持ちを、彼女は静かに受け止めているように見えます。

結婚の申し出を断った雨宮

2015年の映画で、雨宮には結婚を申し込まれている相手がいます。久利生と別れたあとも、彼女は自分の生活を送り、新しい人間関係を築いていたのでしょう。

けれども、久利生と事件を追い、改めて自分が検事として何を大切にしたいのかを見つめ直した雨宮は、その結婚の申し出を断ります。

この選択には、少し複雑な気持ちになります。久利生と別れてから長い時間が経ち、ようやく別の人との結婚を考えられるところまで来ていたのに、彼と再会したことで雨宮の心は再び揺れ動いたのかもしれません。

ただ、結婚を断ったのは久利生と復縁するためだと考えてしまうと、雨宮が語った仕事への思いが見えにくくなります。彼女は、検事としてまだ自分がやるべきことがあると感じていました。久利生との再会は、忘れていた恋心だけでなく、自分の仕事に対する気持ちを改めて確かめる時間にもなったのでしょう。

自分を大切に思ってくれる人がいて、結婚という未来も目の前にある。それでも、今の自分はそこへ進むことができない。雨宮の決断は、相手にとっても簡単に受け入れられるものではありませんが、彼女自身も迷わずに選べたわけではなかったように感じます。

かつては久利生からの言葉を待っていた雨宮が、今度は自分の気持ちを見つめ直し、自分で決断しています。その姿には、恋愛の結末とは別の意味で、彼女が歩んできた時間の長さが表れていました。

石垣島が二人の物語に戻ってきた

2015年の映画の終盤、雨宮は久利生に、石垣支部へ異動することを伝えます。

石垣島といえば、2001年の最終回で久利生が転任した場所です。雨宮が彼に会うため、遠くまで訪ねていった場所でもあります。

あのときの雨宮は、久利生に会いたいという気持ちを抱えて石垣島へ向かいました。仕事の上司と部下という関係を越えて、彼ともう一度顔を合わせたいと思ったからこその行動だったのでしょう。

ところが2015年には、雨宮自身が検事として石垣島へ向かうことになります。

同じ場所へ向かうのに、その理由が変わっているところが印象的です。以前は久利生のいる場所を目指していた雨宮が、今度は自分の仕事のために、かつて彼が歩いた場所へ向かおうとしています。

別れ際、雨宮は久利生と同じ道を歩いていくという気持ちを伝えます。

私は、この言葉を恋人として再び一緒になる約束だとは受け取っていません。むしろ、久利生のそばで仕事をしていたころに教わったものを、これからは一人の検事として大切にしていくという雨宮の意思が感じられます。

久利生もまた、そんな雨宮を引き止めようとはしません。彼女が自分で決めた道を歩いていくことを、言葉少なに受け止めているように見えます。

ここで久利生が雨宮に愛を告白し、二人が結婚を約束していたら、きっとそれはそれで嬉しい結末だったと思います。けれども、2001年には久利生を追いかけるように石垣島へ行った雨宮が、2015年には自分の仕事をするために石垣島へ向かう。その変化を見ていると、彼女が単に久利生の恋人として描かれてきたわけではないことが、よく分かります。

そして二人が別れる場面には、恋人同士だったころとは違う穏やかさがあります。久利生に会いたくて遠い場所まで行った雨宮が、今度は久利生に見送られながら歩いていく。そんな時間の重なりが、言葉以上に二人の関係を伝えているように思います。

明るい空港ロビーの黒い仕事用バッグと窓の向こうを飛ぶ飛行機、それぞれが選んだ道の文字

『HERO』久利生と雨宮はなぜ結婚しなかったのか?

『HERO』で久利生と雨宮が結婚しなかった理由を考えると、久利生の不器用さはやはり無視できません。

久利生は、事件の真相を確かめるためならどこまでも追いかけますが、雨宮が何を望み、どんな気持ちで自分を待っているのかとなると、仕事ほど器用には向き合えません。2001年に雨宮が石垣島まで会いに行ったあとも、2007年の映画でキスを交わしたあとも、二人は同じ場所で暮らし続けることにはなりませんでした。

雨宮のほうも、久利生の仕事への姿勢を理解しているからこそ、彼に何かを求めることが難しかったのかもしれません。事件の大小を問わず、納得できるまで調べるという久利生の生き方は、彼女が好きになった理由の一つです。その一方で、仕事を最優先にする彼との生活には、寂しさやすれ違いが生まれることもあったのでしょう。

ただ、二人が結婚しなかったことを、久利生が雨宮を幸せにできなかったという話だけで終わらせたくはありません。

雨宮は最初から、自分の目標を持っていた女性です。久利生と出会ってから、その目標が消えたわけではありません。むしろ彼と事件を追う中で、検事という仕事への思いが以前よりも深くなり、やがて自分自身がその立場へ進んでいきました。

2001年の雨宮にとって、久利生は理解できないことばかりする上司でした。しかし2015年の雨宮は、彼の行動にあきれながらも、なぜそこまで真実にこだわるのかをよく理解しています。そして、その姿勢を自分の仕事にも重ねています。

二人が離れていた時間は、恋愛だけを見れば寂しいものです。でも、雨宮がその間に何も得ていなかったわけではありません。久利生と過ごした日々を自分の中に残しながら、彼とは別の場所で経験を積み、検事として成長してきました。

だから私は、二人が結婚しなかったという事実と、二人の関係が大切なものだったということは、矛盾しないと思うのです。

好きだった人と一緒に生きる未来を選ばなかったとしても、その人との出会いが人生を変えたことまで消えるわけではありません。雨宮にとって久利生は、かつて恋をした相手であり、仕事を通して自分の進む道を見つけるきっかけをくれた人でもあったのでしょう。

もちろん、久利生と雨宮がその後再び恋人になった可能性を想像することもできます。映画は二人の未来を明確に決めつけず、見る人がさまざまな思いを重ねられる余地を残しています。

ただ、2015年の最後の場面で雨宮が選んだのは、久利生にもう一度愛を告白することではなく、自分の仕事へ向かって歩き出すことでした。その姿を見ていると、二人の物語には、結婚という答えとは違うところにも確かな意味があったのだと感じます。

久利生と雨宮の関係|よくある質問

ここでは、2001年のドラマから2015年の映画までを振り返ったときに、特に気になる二人のその後について整理します。

久利生と雨宮は付き合っていた?

2001年のドラマでは、二人の気持ちが近づいていく過程が描かれましたが、明確に交際が始まる場面はありません。2007年の映画ではキスを交わし、2014年の続編では二人が交際したものの、その後は離れ離れになったことがうかがえます。

久利生と雨宮は結婚した?

2015年の映画までに、久利生と雨宮が結婚したという結末は描かれていません。雨宮には別の男性から結婚の申し出がありましたが、それも断っています。久利生との復縁や結婚についても、映画の中では明確な答えが示されていません。

雨宮はなぜ検事になったの?

雨宮は2001年のドラマ当初から副検事になるという目標を持っていました。その後、城西支部を離れ、2015年の映画では大阪地検難波支部の検事として登場します。久利生との出会いは、彼女の仕事への向き合い方に大きな影響を与えたと考えられます。

2015年映画で二人は復縁した?

二人が復縁したと明確に分かる場面はありません。雨宮は久利生への思いを振り返りながらも、検事として石垣支部へ異動することを伝えています。恋人としての未来よりも、それぞれが同じ信念を持って仕事を続ける姿が印象的な結末です。

雨宮と麻木、久利生との関係はどう違う?

雨宮は久利生の仕事を通して成長し、やがて恋愛感情を抱くようになった相手です。一方、麻木千佳は2014年版からの担当事務官で、久利生との仕事を通して自分の将来を考えるようになります。二人とも久利生から影響を受けていますが、雨宮との間に積み重ねられた恋愛の時間とは異なる関係です。

もう一度、あの日の雨宮を見てみたい

2001年の『HERO』を思い返すと、私の中には、久利生に振り回されながらも一生懸命についていく雨宮の姿が残っています。優秀な検事と聞いて担当を希望したのに、実際には想像もしなかった仕事ばかりが待っていて、何度も腹を立てる。それでも、久利生が事件に向き合う姿を見ているうちに、いつの間にか彼の仕事を誰よりも理解するようになっていました。

そんな雨宮が石垣島まで会いに行ったとき、ようやく二人の気持ちが近づいたように見えました。そして2007年の映画でキスを交わしたときには、この先もずっと一緒にいてほしいと願いたくなりました。

けれども、2015年に再会した雨宮は、もう久利生の言葉を待っているだけの女性ではありませんでした。自分の事件を追い、自分の判断で結婚の申し出を断り、検事として石垣島へ向かっていきます。

久利生は、そんな雨宮を以前と変わらない様子で見送ります。あの二人らしい、少し不器用で、けれども互いのことをよく知っているからこその別れ方でした。

もしもう一度『HERO』を見るなら、2007年のキスシーンのあとに、2015年の雨宮が歩き出す姿も見てみたいと思います。そして、そこから2001年の第1話へ戻ってみると、まだ久利生のことを何も知らず、優秀な検事のもとで働きたいと願っていた雨宮が、少し違って見えるのではないでしょうか。

彼女があの日、久利生の担当事務官にならなければ、石垣島へ会いに行くことも、2007年のキスも、2015年の再会もなかったはずです。

二人が結婚しなかったことには、やはり寂しさが残ります。でも、最初は理解できなかった相手と出会い、その人を好きになり、やがて自分自身の生き方まで変わっていく。そんな雨宮の歩みを最初から見直すと、『HERO』の二人の物語は、恋愛が終わったところで途切れてしまったわけではないと感じられます。

久利生に出会ったころの雨宮が、いつか自分も検事になり、あの石垣島へ向かう日が来ることを知ったら、どんな顔をするでしょうか。

そんなことを思い浮かべながら、もう一度、城西支部に久利生が赴任してきたあの日から見てみたくなります。

『HERO』のシリーズ全体の流れや城西支部の人間関係については、『HERO』全シリーズネタバレ|久利生公平と城西支部、雨宮・麻木の14年を考察でも詳しく取り上げています。2001年から2015年までを通して見直したい方は、あわせて読んでみてください。

作品の基本設定や事件のあらすじは、フジテレビ公式『HERO』(2001年)、フジテレビムービー『HERO』(2015年)で確認できます。

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